湯浅・派遣村々長「こぼれる人が出れば今年もやる」

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全国各地・各業界のユニオンの旗が林立した。スピーチするのは湯浅誠・前派遣村々長(日比谷公園。写真=筆者撮影)

 【ハケンという蟻地獄】
 米国発の金融危機をまともに受けた景気後退により突然解雇され、職も住居も共に失った非正規労働者が大量に発生してから間もなく1年が経つ。その時造られた「派遣切り」という禍々しい言葉はすでに一般名詞として定着した。

 雇用情勢は悪化の一途だ。完全失業者数は昨年の同時期と比べて89万人も増えて361万人にも上る(8月現在、総務省まとめ)。

 企業が派遣労働者をいつでも使い捨てにできる「登録型派遣」の禁止をマニフェストの政策各論に盛り込んだ民主党が今夏、政権を獲得した。派遣労働者の待遇は見直されるものと見られていたが、そうではなかった。

 派遣法改正に多大な影響を与える厚労省の労働政策審議会・労働力需給制度部会のコア・メンバーが自・公政権時代と同じなのだ。彼らは「派遣法改正は前(自・公政権時)のままでやってほしい」とまで言い張っているのだ。抜け穴だらけの法改正で派遣労働者の待遇は何一つ改善されない法律となるのは必定だ。

 典型例が「30日以内の日雇い派遣は禁止」とする条項(案)である。これだと31日目以降は企業が都合の良い時にいつでも解雇できる。さらに後ろ向きなのは、「登録型派遣」の是認を続けたがっていることだ。

 「登録型派遣」は企業にとって実に便利だが、労働者を「部品のひとつ」として扱う雇用形態だ。必要な時だけ調達できるのだから。

 長妻昭厚労相も年金や医療問題で追われ、派遣問題まで手が回らないのが現実だ。それを尻目に官僚と企業側メンバーのペースで派遣法改正(悪)が進みつつある。

 このままだと職と住居を同時に失った非正規労働者が炊き出しに長い列を作った「派遣村」の惨劇が再現される可能性もある。派遣ユニオンの関係者は「危機感を持っている」と率直に語る。

 派遣法の抜本改正を求める労働者の集会が29日夕、東京・日比谷公園で開かれた。

 夜のとばりが降りた野外音楽堂。非正規労働者たちが全国各地から駆けつけ、会場は満席となった。林立するユニオンの旗が晩秋の冷たい風に揺れた。

 派遣法を改悪し大量の「派遣切り」を生んだ自公政権は潰え、派遣労働者の最大の願いである「登録型派遣の禁止」を掲げた民主党政権が誕生した。

 にもかかわらず、事態は改善されない。派遣労働者の苛立ちで、昨年の集会とは一味違う殺気がみなぎった。

 派遣村の湯浅誠・前村長が内閣府参与に迎えられたのは、政府が派遣村を再現させないためだ。年末年始、日比谷公園にテント村ができるようなことになれば、「コンクリートから人へ」を掲げる鳩山政権は面目を失う。

 それでも湯浅氏は、筆者に「こぼれる(=職と家を失う)人が出れば(派遣村)をやらねばならんでしょ。ニーズがあれば、またやりますよ」と語った。権力に取り込まれまいとする決意の現われだった。

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