政権交代から1ヵ月が経った。自民党の密室政治を批判してきた民主党は、記者会見のオープン化を掲げてきた。肝心要の総理記者会見は歴代代表の公約を反古にしてネット・メディアやフリーランスを締め出しているが、永田町・霞ヶ関では記者会見のオープン化に踏み切った政党や省庁も出てきた。
16日外務大臣定例記者会見の冒頭、三上正裕・報道課長が「質問する方は社名と氏名を『マイク』の前で名乗って下さい」と告げた。
間髪を入れず岡田外相が理由を説明した。「インターネット中継で声が聞こえないという指摘がありましたので、そう(マイク使用)させて頂きます」。
外務省の記者会見室には大小4本のマイクが置かれているのだが、使う記者はいなかった。前方に陣取ったクラブ記者と大臣だけが聞こえれば、事足りたからだ。
外務省は他省庁に先駆け9月29日から記者会見を記者クラブ以外にも開放しており、『ニコニコ動画』がライブで中継している。質問の記者もマイクを使うことが決まると『ニコニコ動画』には、それを讃えるコメントが相次いだ。
クラブ以外のジャーナリストは皆マイクを使ったり、よく通る大きな声で質問するが、クラブ記者のほとんどは、小声でボソボソと話す。長年の習慣だろうか。それとも「インターネット中継なんて俺たちには関係ないね」と思っているからだろうか。
野党に転落した自民党は13日から総裁会見を一応オープン化した。「一応」としたのは「平河クラブ(自民党記者クラブ)」の質問が優先され、ネットメディアやフリーランスはその後になるからだ。自民党が政権の座にあった頃、質問は「平河クラブ」だけに限られていた。なれ合いもたれ合いの関係を続けてきた大メディア以外の意見も聞かねばならない、と気づいただけでも進歩だ。
政界の暴れん坊、亀井静香・金融郵政担当相は、記者クラブの旧態依然とした姿勢に業を煮やし、クラブ以外のジャーナリストを対象にした記者会見を大臣室で開いている。いわば「第2記者会見」だ。
「第2記者会見」に出席する記者は夕刊紙、経済誌、海外紙など多士済々だ。「フィナンシャル・タイムス」「ウォールストリート・ジャーナル」といった経済・金融問題では世界的影響力のあるメディアも出席していることに驚く。彼らは「第2記者会見」がなければ大臣の見解を直接聞くことはできなかったのだ。これでは鎖国と何ら変わりはない。日本は世界の笑い者である。
気をつけなければならないことは、記者会見オープン化のアリバイ作りにいそしむ省庁と記者クラブが出始めていることだ。ネットメディアもフリーランスも確かに出席はできるのだが、質問はできない。質問できたとしてもクラブの幹事社に質問内容を提出しなければならない。「仕切るのは俺たちだ。分かってるんだろうな」と言わんばかりだ。
この種の省庁の記者会見には出席してはならない。談合のアリバイ作りに利用されるだけだ。
記者会見オープン化」のムーブメントは、26日から国会が始まると勢いをそらされる可能性が高い。鎖国が解かれるまではまだ時間がかかりそうだ。
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