《文・中山栄子》
消費税込みの総額表示が4月1日から始まるのを前に、値上げの話題が新聞テレビに登場するようになった。
食用油、缶詰、ハンバーガー、セルフうどん店・・・税込み価格で分かりやすくすればいいだけの話なのだが、各社いくばくかの値上げを発表している。なぜか?
理由はコロナ禍での需要落ち込みに歯止めがかからないからだ。コロナ不況の影響は飲食店だけでなく、私たちを取り巻くサービス業にまで及んでいた。
細かい文字で書かれたA4判の紙を見つけたのは、もう半月以上も前だ。
いきつけのクリーニング屋。コロナ対策のため天井から吊るされたビニールの仕切りに、「値上げの告知」が貼り付けられていた。
クリーニング屋の値上げは、3月19日にすでに始まっていた。4月1日からの開始にすると、便乗値上げのように見えるからなのだろうか。
「リモートでみんなスーツを着ないの。ワイシャツも。うちのチェーンでも前年同月比50%から60%減は当たり前。2人で回していた店も1人で十分になるくらい業務量が減った」と受付の女性は言う。
「お宅だって、いつものようには(服を)出さないでしょ」と、ダメ出しをされた。
そう言われればそうだ。第一、人と会うような状況がないのだから父ちゃんもワイシャツを着ない。
そのクリーニングチェーンでは、もともと高めにしていた土日料金並みに平日料金を引きあげたのだった。
わが家が狭いために借りている貸倉庫でも、同じ異変が起きていた。
毎月15日までに来月分を支払わないと携帯に督促メールが来るようになっている。3月から金額は18,200円となった。従前の料金から見てすでに2000円近い値上げだ。
断捨離に励んで、貸倉庫を解約しようかとの考えが一瞬頭をよぎった。
近隣の商店やサービス業者が廃業していくのを見るのはつらい。だが、着てもいない父ちゃんのワイシャツを余計にクリーニングに出すこともできない。
コロナに対する政治の無策が、じわじわと真綿で首を絞めるように庶民を痛めつけている。
~終わり~
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