女房の名代としてクリーニングの受け取りに行った。クリーニング店は久々だ。
仕上がった衣類で一杯だった棚ひとつが、ガラガラに空いているのに驚いた。
店員に聞くとコロナの影響だそうだ。緊急事態宣言で仕事がリモートになったのがきっかけだった。
「売り上げはコロナ前に比べると半分になった」。店員は顔を曇らせた。
緊急事態宣言が解除されても、客足は戻らなかった。会社員の服装習慣が変化したからである。
取引先に行く時だけスーツを着て、普段は綿パンをはいて出社するのだそうだ。自宅でズボンを洗う人が増え、クリーニングに出すことが減ったというのだ。
上半身だけ見えればいいリモート会議では、綿パンで十分なのだろう。
「シミがついたり、家で洗っても手に負えないものだけ持ってくるので、シミ抜きが増えたんですよ」と店員は力なく笑う。
そもそも外出することが減ったので、コートの需要も少ない。冬のクリーニング事情も厳しくなりそうだ。
コロナが完全収束してもクリーニング業界の景気回復は難しいかもしれない。
サラリーマンがリモートで仕事をこなし出社に及ばなくなれば、大規模なオフィスは不要になる。
商取引もネットで済ます。ビジネス街そのものがなくなる可能性さえある。
社会や経済の構造が激変する過渡期を生き残るには体力が必要だ。
体力のない零細業者から倒れていくのではないだろうか。
~終わり~