高円寺駅前を1万5千人の市民で埋め尽くした「脱原発デモ」(4月10日)の再現だ。今回のデモは若者のメッカ渋谷となった。
「誰もが参加できるようなデモにしたかった」との(呼びかけ人:平野太一さん=杉並区・介護士=26歳)狙い通り、老若男女、あらゆる階層の人々が参加した。
乳母車を押す父親、子供の手を引く母親、若者は楽器持参だ。
「これだけの被ばくをする人は、全国の原発業務の従事者の中でも極めて少なく、この数値を小学生らに求めるには、学問上の見地や私のヒューマニズムから受け入れがたい」。昨日、内閣参与の小佐古敏荘教授が政府の原発事故対応を批判して辞任を表明している。
子供の健康を心配して参加した家族連れや主婦が目につく。神奈川県から妻、2人の男児(7歳、12歳)と共に足を運んだ男性(40代)は、意を決した様子で話す――「子供が一番心配。雨が降ったりすると子供が怖がる。今まで諦めていたが、今回は動かないことには始まらないと思って参加した」。
10歳の男の子を持つ横浜在住の女性は福島原発の事故が他人事とは思えない。福島県庁に電話を入れ「福島の子供たちを遠くに避難させるよう」申し入れた。「私が皆、引き取ってもいい」とまで語る。
「政府の発表は全然信用していない。トンカチで(政府要人の)頭を叩きたい。東電の賠償には税金を使ってほしくない」。女性の政府と東電に対する怒りは筆者以上に凄まじかったが、市民感情としては至極もっともだ。
福島県境にほど近い茨城県北部から駆け付けた男性(30代・会社員)は「放射能が飛んで来ていること自体ヤバイ。不安。外出時は必ずマスクをしなければならない」。
「ただちに健康には影響ない」などとお気楽なことを述べているのは、政府だけだ。普通の人々の不安は大きくなる一方である。
打楽器のリズムに乗って「原発反対、原発要らない、皆で止めろ」のシュプレヒコールが渋谷の繁華街に響く。ヨチヨチ歩きの子供も「ゲンパチュ」と声をあげた。
30~40年かけて「原発は安全でエコ」と刷り込んできたのなら、同じ歳月をかけて「原発は危険で不経済」と刷り込み直したらよいのだ。
ひとかたまり200人のデモの隊列は、果てしなく続いた。
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田中龍作の取材は読者に支えられています。