「普天間移設問題」をめぐって鳩山政権は袋小路に追い詰められた。グアムへの全面移転を米側が受け入れないと分かると、思いつきに近い形で国内の候補地を探った。先ず長崎県大村、大分県日出生台などである。沖縄と距離が離れ過ぎているため米国が難色を示した。
次に白羽の矢を立てたのが、沖縄のホワイトビーチ沖と鹿児島県徳之島だった。いずれも地元の反対で基地建設は絶望的だ。徳之島は沖縄と離れており訓練基地の分散は不都合であるとして米軍も難色を示している。
米軍基地という「最大の迷惑施設」を持って行くのである。十全な根回しをして具体的な地名が明るみに出る時にはすでに決定している――練達の政権であればこうである。
ところが鳩山政権はあまりにも稚拙だった。ホワイトビーチ案は官房長官が口の端に乗せたことで明らかになり、徳之島案は民主党衆院議員の牧野聖修氏が下見に行ったことで露見した。これでは反対してくれと言って歩いているようなものである。
鳩山政権は苦し紛れの策として辺野古沖の桟橋方式を再浮上させた。桟橋案は1996年に登場したのだが、海兵隊が「鉄の塊の上で訓練するのはイヤだ」と拒否した。埋め立て方式に比べるとテロ攻撃に晒される危険性が高いためである。海兵隊の司令官が「琉球人」の政府関係者にこう漏らしたというのだ。
こうして現行案のV字滑走路に落ち着いたのである。稚拙な鳩山政権といえども自民党政権の防衛族、建設業界、地元政治家などの利権が絡んでいることは認識していただろう。
だが米ゼネコン大手のベクテル社が絡み、オバマ政権が軍産複合体を把握しきれていないことまでは考慮に入れていなかったのではないか。オバマ大統領自身も現行案をいじることはできないのである。辺野古のキャンプシュワブではV字型滑走路建設を既定方針として、滑走路が通ることになる場所にあった海兵隊員の宿泊施設をすでに移動させている。(写真参照)
にもかかわらず民主党は「自民党と違うことをやれば票になる」と安直に考え、昨夏の総選挙で「県外移設」を公約に掲げてしまった。
民主党のこのお粗末さは2007年の都知事選を思い出させる。根回しも下工作も進んでいない段階で意中の候補者の名が次から次へとマスコミに挙がった。「この組織とあの組織の支持は取り付けましたから最低でも○○票は出ます。大丈夫ですから出馬して下さい」と隠密裏に話を持って行かなくてはならないのに、名前だけが先行した。意中の候補者は悉く不安になり出馬を断ったのである。
政府が辺野古沖の桟橋方式で無理やりに押し通そうとしても、建設資材の搬入経路となる海岸では反対派の環境保護団体などが座り込みを続けており、地元名護市の稲嶺市長も基地建設反対の立場を変えていない。
それでも強行すれば混乱は必至だ。普天間基地は1ミリたりとも動かなくなる恐れがある。
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