米軍普天間基地の移設先として政府が白羽の矢を立てた鹿児島県徳之島の3町長は7日、官邸で鳩山首相に会い「受け入れ拒否の民意」を直接伝えた。
実力者の徳田虎雄氏に会い、訪問先の沖縄で移設候補地として名前を挙げるなど鳩山首相はこのところ徳之島移設に性急な動きを見せている。3町長は政府案として正式に決まる前に「ノー」を突きつける必要があった。
鳩山首相との会談には鹿児島県の伊藤祐一郎知事、徳之島出身の徳田毅衆院議員が同席した。会談は1時間余りに及んだ。
伊藤知事によると首相は先ず「皆様にご迷惑をかけて済みません」と謝罪した。そのうえで日米関係の重要性について述べ「普天間から遠くない所(徳之島)に移設させて頂きたい」と要請した、という。
平野博文官房長官も「現実的な対応をせざるを得ない。日本国全体の問題として日本国全体で分担してもらいたい」と求めた。政府の最高責任者とナンバー2が“米軍基地を受け入れてほしい”と迫ったのである。
3町長(伊仙町=大久保明、天城町=大久幸助、徳之島町=高岡秀規)は、徳之島への米軍基地移設に反対する島内外の2万5,800人の署名を首相に手渡した。署名の宛名は「内閣総理大臣鳩山由紀夫殿」である。
3町長は首相に対して異口同音に「基地反対の民意が覆ることはない」と強調した。記者団が「もし総理がまた会いたいと言ってきたらどうするか?」と問うと、3人とも「何回、何十回会っても平行線」ときっぱり答えた。
徳之島移設案をめぐっては地元に伝わるより先にマスコミに「徳之島」の地名が出るなど官邸の不手際が目立った。島民に不信感や反感を植えつけてしまったのである。
にもかかわらず鳩山首相は徳之島への移設に強いこだわりを見せる。首相は「可能な範囲で受け入れてもらえないだろうか。訓練だけでも受け入れてもらえないだろうか」と懇願した、という。公約通り県外に移設した、という実績を何とか作りたいのだろう。まるで細い一本の糸にすがっているようにさえ見える。一国のリーダーの威厳は微塵も感じられない。
官邸前では会談に向かう3町長を報道陣が待ち構えた。町長らを乗せた黒塗りのハイヤーが官邸のゲートを潜ろうとした瞬間、ひとりの女性(50代)が「騙されるなよ~」と叫んだ。女性は徳之島伊仙町出身という。会談があることをテレビで知り駆けつけてきた。降って湧いたような徳之島移設案を「とんでもない話。『苦しみを分かちあえ』と言うのだったら、東京に基地を持ってくるべき」と憤慨したようすで語った。
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