右に優しくて左に厳しい ― 警察の性格が露骨に表れたデモ警備だった。3月27日、韓国料理店や韓国グッズ店が軒を連ねコリアンタウンと異名をとる新大久保で“事件”は起きた。
在特界隈主催のヘイトデモだった。「●●人は日本から出て行け」・・・日章旗や旭日旗を掲げるレイシストたちが特定の民族を罵倒しながら、大通りを練り歩いた。
カウンターと呼ばれる差別に反対する人々が、レイシストを通すまいと道路にシットインするなどした。
警察の対応には組織の本性が表れていた。「デモ隊の妨害をしている君たち。速やかに歩道に上がりなさい。こちらは新宿警察署長である。警察の介入がある前に・・・」。スピーカーの音量を一杯にあげた指揮車から指導・警告が流れた。
ヘイトデモを記録し続ける友人の写真家は「警察が在特界隈を守っているとしか見えない」とこぼす。
一方で抗議者などのような左寄りの市民には厳しい。突き飛ばしたりは朝飯前だ。
ヘイトデモをめぐる警察の過剰警備が、きょう開かれた参院法務委員会で取り上げられた。
質問に立った有田芳生議員(民進党)は、抗議の女性が警察官に首を絞められたことを追及した。
有田議員が「首を絞める行為があったのか?」と質すと、警察庁長官官房の斉藤実審議官は「あった訳ではない。(女性を)歩道に戻そうとして手を伸ばしたところ結果として(首に)当たった」と取り繕った。
当時現場を見ていた有田氏にウソは通用しなかった。「何を言ってるんですか? 配布した写真を見ましたか? 警察官が首を絞めているじゃないですか」。有田氏は追及の手を緩めなかった。
河野太郎・国家公安委員長は「警察の警備に行き過ぎがあったとしたら申し訳ないと思う」と謝罪した。
「なんだ、差別主義者たちを警察が守っているじゃないか」。おととし国連人種差別撤廃委員会が日本に調査に訪れた際の指摘だ。有田氏はこれを引用し、政府に対してヘイトデモへの厳しい対処を促した。
国連の同委員会は日本政府に対して法的規制を求めているのである。
河野氏の前任者である山谷えり子・国家公安委員長は、在特会との関わりを『週刊文春』にスッパ抜かれた。
おととし9月、日本外国特派員協会(FCCJ)で持たれた記者会見で山谷氏は「在特会のHPを引用して」TBSラジオの質問に回答していたことをポロリと漏らしたのである。
外国人記者たちから一斉にどよめきが起こったのを筆者は鮮明に記憶している。
代替わりしたとはいえ警察行政のトップがこれでは、現場が在特界隈に甘くなるのも無理はない。
~終わり~
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