「安保法案に反対する署名をお願いします」。戦争反対を訴える若者たちで賑わう国会正門につながる歩道で、署名を呼びかけている男性がいる。
創価学会員の天野達志さん(愛知県安城市・農業=51歳)だ。国会正門近くで署名活動に立つのはきょうで2回目になる。
天野さんが安保法制に疑問を持ち始めたのは、集団的自衛権の行使を認めた昨年7月の閣議決定から。
「それでも公明党が『新3要件で歯止めをかけたから合憲だ』と説明していたので、一旦信用していた」という。
転機となったのは6月初旬、憲法学者が国会で「集団的自衛権は違憲である」と証言したことだった。
「あれっ? 公明党の説明と違うぞ」。天野さんは後頭部を殴られるようなショックを受けた。
「現実の世界で戦争を止めたい」。天野さんはすぐに立ち上がった。6月末にツイッターアカウント『ひとりの学会員』を立ち上げ、7月30日からは署名活動を始めたのである。
「安保おかしいね」などと口にすると、地域の学会員から「反逆者」「信心が足りない」などと罵倒される、という。
「学会員であるなら公明党を支援して当たり前という同調圧力がある、やりきれない」。天野さんは眉間にしわを寄せる。
「心の中では疑問を感じていても、村八分を恐れて声を上げることができない。安保反対への賛同が広がらないのはこのためだ」。天野さんは分析する。
「内部から声をあげることに意味がある。学会員が勇気を持って公明党にモノを言う。これを形に示したかった」― “反逆者”は青年のように清々しい表情で語った。
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