安倍首相が うそぶく 「世界一の安全基準」に司法がNOを突き付けた。
関西電力・高浜原発3、4号機の「再稼働差止め」を地元住民が求めていた仮処分申請で、福井地裁はきょう、「関西電力は3、4号機の原子炉を運転してはならない」とする決定を下した。
被告の関西電力は決定を不服として異議を申し立てる方針だが、かりに異議が認められるとしても半年から1年かかる。
高浜原発3、4号機は原子力規制委員会が新規制基準に適合しているとしてお墨つきを与え、関西電力は11月の再稼働を目論んでいた。福井地裁の決定は原子力規制委員会の新規制基準を否定したことになる。
「再稼働差止め」の決定を下したのは、昨年5月に大飯原発3、4号機の運転差止め判決を言い渡した樋口英明裁判長。
前回、「250キロ圏内の住民の人格権」に基づいて判決を言い渡した樋口裁判長は、今回の仮処分決定で、原子力規制委員会の新規制基準が「信頼性を失っている」「合理性を欠く」と指摘した。
樋口裁判長が再稼働差止めの決定を下した大きな理由は「基準地震動」と「使用済み核燃料プール」だ。
原子力規制委員会が定める高浜原発3、4号機の基準値震動は700ガルだが―
▼過去700ガルを越える地震動は幾度も到来している。
▼700ガルを下回る地震動でも外部電源が断たれ、主給水ポンプが破損し主給水が断たれる(冷却機能を喪失し炉心損傷を招く)恐れがあることは関電も認めている。
―樋口裁判長は、「新規制基準は緩やかすぎ、これに適合しても高浜原発の安全性は確保できない」とした。いい加減な基準では安全性が保てない、というのである。
危険性が指摘されて久しい使用済み核燃料プールについても「給水設備の耐震性はBクラス」とした。世界一ではないのだ。
「国民の安全が何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろうとの見通しのもとにこのような対応は成り立っているといわざるを得ない」と述べ、原子力規制委員会の姿勢を真っ向から批判した。
今回の決定は原発再稼働ありきの安倍政権に痛打となった。
原告弁護団の河合弘之共同代表は、「明日(15日)昨年5月の判決文と今回の決定文を持って原子力規制委員会を訪れ、『基準を最初から作り直せ』と迫る」そうだ。
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