アメリカ人がオープンなのには驚く。オープンというより「あからさま」と言った方が正確だろう。
19日、キエフのヒルトンホテルで開かれた「ユーロマイダンから1年」と題するシンポジウム。二人は会場に到着するなり近づいて顔を合わせた。
二人とはウクライナのハンナ・ホプコ議員と米国のジェフリー・パイアット大使である。
ジェフリー大使はマイダンのさなか、ヤヌコビッチ大統領追放後(※)の閣僚人事を米国務省高官と電話で協議していた御仁だ。
電話はロシアに盗聴されユーチューブ上に流れた。マイダンへのアメリカの関与が改めて明らかになった“事件”だった。
ハンナ・ホプコ議員(32歳)は、ポロシェンコ与党の一角をしめる政党「自助(Self Reliance) 」の所属だ。
汚職まみれでウクライナ国民の支持を失ったティモシェンコ元首相に代わって、米国が新女王と期待する議員である。国際情勢通であれば「ハンナ」と言う名前でピンとくるだろう。
~米国産シェールガス輸入計画も~
ハンナ議員は「ウクライナ危機後のシナリオ」と題する分科会で「ロシアからの天然ガスの輸入を減らす」と発言した。
ウクライナはエネルギーの70%をロシアから輸入する天然ガスに依存している。(財団法人 高度情報科学・技術研究機構調べ)
出席者から「他に代替エネルギーはあるのか?」と質問が飛んだ。ハンナ議員は「アメリカをはじめとする他の国々が助けてくれる」と答え、ジェフリー大使を喜ばせた。
ハンナ議員が所属する政党「自助」のエネルギー政策担当者によれば、米国産シェ―ルガスの輸入ターミナル建設計画がある、という。
さらに驚いたのは、前駐ヨーロッパ米軍総司令官のマーク・ハートリング氏の発言だ。総司令官は次のように述べた―
「ウクライナの国防予算は断食ダイエットだ。GDPの0.8%しかない。軍隊を改造するのに一番いいタイミングは戦時下だ」。
要は軍備を増強せよ、ということである。
ウクライナが今さらロシアの兵器を買うことはできない。そうなればオレンジ革命(2004年)からの浅からぬ関係で米製兵器ということになるだろう。
総司令官は米製兵器を買えと言外に迫ったのである。総司令官と符帳を合わせるように、ジェフリー大使は「ロシアの戦車に脅えるな」と檄を飛ばした。
米国はエネルギーと軍事でウクライナをロシアから切り離し、さらにはこの2つでウクライナを がんじがらめ にするつもりのようだ。
ウクライナの財政は崩壊に近い所にまで来ており、常識で考えれば米製兵器を買う金などない。
米国はウクライナの豊かな地下資源、森林資源、穀物を担保に資金を貸し付けるものと見られている。
経済が崩壊した後、ウクライナは国の天然資源まで、ハゲタカにしゃぶり尽くされることになる。
◇
(※)
電話の時点で、まだヤヌコビッチ大統領は追放されていない。