独立記念日翌日の25日夜から26日朝にかけて、ロシアはウクライナに開戦後最大級の空爆を見舞った。
ウクライナのミコラ・オレシュチャク空軍司令官によれば、ミサイル127基、攻撃型ドローン109基が飛来。ミサイル102基、ドローン99基を撃ち落とした。
ロシアの攻撃はウクライナのほぼ全土に及び、7人が死亡、数十人が負傷した。発電所、変電所などエネルギー供給施設が破壊され、停電もほぼ全土に及んでいる。
BBCをつけると、人々は地下鉄駅を利用したシェルターに逃げ込んでいた。ロシアが本格侵攻してきた2年半前(2022年2月)と同じ光景が広がっていた。
ロシア軍は一気にキーウ郊外まで迫った。道路を走っているのはウクライナ軍の車両だけ。食料供給が止まるのは目に見えていた。
田中はパンと水を備蓄していった。一日でも長く生き延びて、戦争の現実を日本の読者に報せたかった。
ロシア軍が投宿先のホテルに侵入してきたら、どこに隠れようか、と真剣に考えていた。階段の踊り場がいいかな、物置がいいかな…今にして思えば実に幼稚なことで悩んでいた。
田中は外交を否定するものではない。外交に期待する。
だが、独裁者の領土的野望の前に外交は通用しない。襲って来た強盗に聖書を説くようなものである。
ロシアのウクライナ侵攻は2014年に始まる。田中は現地で一部始終を見ていたが、外交のガの字もない電撃侵攻だった。
反米親露の観念的平和主義者はまるで呪文のように「ゼレンスキー大統領が外交に失敗した。だから戦争になった」と言う。笑止である。当時、ゼレンスキーはまだコメディアンだったのだ。
かりに台湾海峡で有事になったとしよう。在日米軍基地のレーダーが攻撃を受け、米軍が出動したとする。日本は大パニックだ。
プーチンを信奉する国会議員やブンカジンは言い始めるだろう。「ロシアが日本を守ってくれる」と。
そんなことは太陽が西から昇ってもありえない。
ロシアの悪逆非道を紹介しよう。ウクライナはホロドモール(1932~33年)で食料を奪われ、400万人が餓死した。
ブダペスト覚書(1994年)で核をすべて持って行かれ、なおかつ今次の戦争ではプーチンから武装解除まで迫られた。
シェルターに逃げ込んだウクライナ市民の憔悴しきった表情が現実を物語る。
~終わり~
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