握り潰された殺人事件 政治に翻弄される遺族

「種雄が亡くなった時もまともに捜査されず闇に葬られ…」父親は涙を流しながら語った。=20日、司法記者クラブ 撮影:田中龍作=

 官邸報道部の新聞・テレビは触ることさえできない。週刊文春だからこそ報道できる事件であるが、政治案件と政治案件の激突である。

 木原誠二官房副長官の妻X子さんの元夫で不審死を遂げた安田種雄さん(享年28歳・風俗店勤務)の遺族が、きょう20日、司法記者クラブで会見した。

 文春によると事件はこうだ―

 2006年4月、種雄さんが自宅の1階で血まみれになって死んでいるのを父親が見つける。警察は自殺として処理した。妻X子さんは2階の寝室で寝ていた、とされる。

記者会見に臨む父親。17日付けで大塚警察署長に宛てて再捜査を希望する上申書を提出した。=20日、司法記者クラブ 撮影:田中龍作=

 それから12年が経った2018年4月、再捜査が始まる。X子さんの男性友人Y男さんから重要証言が得られたからだ。

 Y男さんはX子さんから「(夫の種雄さんを)殺しちゃった」という電話を受けたというのである。Y男さんが現場に駆け付けたところ、種雄さんは血まみれになって倒れていた。「夫婦喧嘩になって(中略)切ってしまった」とX子さんから告白されたという。

 再捜査が始まった頃(2018年4月)、木原氏は自民党政調副会長である。木原氏とX子さんの結婚は2014年。再捜査開始当時も今も婚姻関係にある。

 再捜査は1年足らずで打ち切られた。捜査幹部は苦々しい表情で語った―

 「Y男の供述があって旦那が国会議員じゃなかったら絶対逮捕できるよな」「木原さんが離婚するか、議員を辞めれば(捜査に再び)着手できる」と。

 TBS記者が伊藤詩織さんをレイプした事件では、官邸が逮捕状を握り潰したことが明らかになっている。

 警察は政治に弱いのだ。

弁護士ではなく週刊文春の編集者が同席した。極めて異例である。=20日、司法記者クラブ 撮影:田中龍作=

 週刊文春の記事中、捜査員の赤裸な証言がポンポンと出て来る。職務により知り得た機密情報を外に漏らすには、警視総監レベルの高い地位の了解が要るはずだ。

 警察幹部と太いパイプを持つ大物政治家の働きかけがあったことは容易に察しがつく。木原(岸田)潰しが狙いだ。ジャーナリスト界隈では菅前首相の名前が飛び交う。

 木原官房副長官は、週刊文春(7月13日号)が事件を報じると、すぐに編集部に「名誉棄損で告訴」すると通知してきた。

 安倍政権時は政治の力で事件がいくらでもネジ曲げられていた。籠池夫妻は200日間も未決勾留されたが、事件の核心に触れる公文書を偽造した官僚はお咎めなしだった。

 今回も政治の力で事件が闇に葬られるのだろうか。政治に翻弄される遺族はたまったものではない。

 ~終わり~

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