「よって本案は原案通り可決します」。12時49分、尾辻参院議長の声がインターネット中継を通じて参院議員会館前に響いた。難民申請3回目で本国への強制送還を可能にする入管法改悪法案が可決成立した瞬間だ。
17年前、軍事政権のミャンマーから命からがら日本に逃れてきたミョーチョーチョーさんは、しゃがみ込んだまましばらく動けなかった。
ミョーさんは3回目の難民申請を却下され、現在不服申し立て中だ。新入管法が施行されると強制送還される可能性が高くなる。スマホには入管に収容されている同胞から送られてきた写真があった。脛や腕に残る拷問の跡が禍々しい。
ミョーさんは民主活動家にしてロヒンギャ。ミャンマーに送り返されれば極刑は免れないだろう。「強制送還されるんだったらここで自殺するよ」と声を震わせた。
昨日8日は、入管法改悪法案が参院法務委員会で採決された。採決されると間もなく外国人労働者たちが大挙、国会周辺に集まった。同法案の改悪反対集会に合流したのである。
外国人労働者は安価な労働力として日本に招き入れられ、用済みとなれば捨てられる。就労ビザが出ないためオーバーステイとなり強制送還の対象となる。
外国人労働者たちの姿は、明日の日本人労働者に見えて仕方がなかった。日本がこのまま貧しくなってゆけば、仕事を求めて海外に出るのが当たり前のようになるだろう。
外国で酷い扱いを受けても文句は言えない。「お前の国は我々の同胞を拷問に掛けてるじゃないか」と言われればそれまでだ。
もう一つ。使い捨てにされるところは日本の非正規労働者も同じである。
日本をどんな国にしたがっているのか。為政者の描く構図がよく分かる法改正(改悪)だった。
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