危うくダマされるところだった。
「神宮外苑を未来につないでいく」…黄葉したイチョウ並木をバックにうっとりするようなフレーズが新聞紙面に踊る。全面広告だ。朝日・読売・日経の28日付け朝刊に掲載された。
外苑の樹木3千本の伐採に反対するグループが広告を出したのかな、と思いながら目線を下にずらして行った。
待っていたのはドンデン返しだった。広告主は「三井不動産」「日本スポーツ振興センター」「伊藤忠商事」などである。外苑の樹木3千本伐採の張本人たちではないか。
ダマされていたことが分かり、怒りが沸騰した。
ダマシは追い打ちをかけるように続く。「みどりを増やします」とあるのだ。「みどりの割合を約25%から約30%に、樹木の本数は1904本から1998本に増やします」と言う。
子どもダマシもいい加減にしろと言いたい。樹齢100年を超す巨木古木を伐採して、造園業者から買うヒョロヒョロとした木を植えたところで、どうなるというのだ。
鬱蒼とした神宮の森は消滅するのである。
みどりの割合、樹木の本数ともに数字のマヤカシにすぎない。
経営に苦しむ新聞社は、巨額の全面広告をもらったことで、樹木伐採に批判的な記事は書きづらくなるだろう。
広大な神宮外苑の森には野鳥もタヌキもいて滾々(こんこん)とした地下水脈が流れる。自然は一度壊したら取り返しがつかない。
~終わり~