高層アパートが林立するキーウ市郊外。黒いコンクリートの塊が暗闇に聳え立つ。塊は数えきれない。まるでゴーストタウンだ。
勤め帰りだろうか。頭にライトを巻いた男性たちがビルに吸い込まれて行く。
田中は7階にあるヴラディミールさんのお宅を訪ねた。停電でエレベーターが止まっているため階段を歩いて登った。
2LDKのお宅はキャンドルで灯りを取っていた。7日までは毎日4時間ずつ2回、計8時間の停電だったが、8日は計12時間停電したという。
停電中はインターネットも携帯電話もつながらない。
ヴラディミールさんが仕事などで外出している時、妻のレナさんとの会話は、無線(ウォーキー・トーキー)だ。
今(8日現在)のところスチームが供給されているため、寒くはない。今後、さらにエネルギーインフラが破壊されれば、スチームの供給は難しくなるだろう。ヴラディミールさん一家は寒さに震えるようになる。
キーウ市危機管理部門の最高責任者ローマン・トゥカチェンコ氏が「今後1日12時間の停電もある。その時点で市民に疎開を促す」と述べていたが、ターニングポイントの12時間停電がやってきたようだ。
だがヴラディミールさんは「24時間停電になるまでは留まる」と言う。
「ロシアは我々の士気をくじき抵抗させないようにするためインフラを破壊している。降伏したら皆殺しにされるだけだ」と戦う姿勢を示した。
~終わり~