プーチン演説は誰もが予想していた通りだった。
象徴的なのはプーチンが「ウクライナは(停戦)交渉のテーブルに着け」としたうえで「(ロシアが奪取した)新しい領土に関しては触らない」と言い放ったことだ。
停戦交渉の大前提としてロシアが武力で獲得した領土が確定するのである。
つごう半年以上現地に滞在している田中は、あらゆる街や村で人々にインタビューしてきたが、ほとんどの人が「ウクライナのすべての地からロシア軍を追い出すまで戦うべきだ」と答える。
ロシアのプロパガンダを刷り込まれた日本の反米原理主義者が唱えるような「即時停戦」を受け入れたらどうなるか。それをウクライナの民は身をもって知っているのである。
ロシアは4州を橋頭堡にして、もっともらしい口実を付けてさらに西に出てくるだろう。
もう一つ予想通りの発言があった。「ロシアの(新)国境はあらゆる兵器を使ってでも守る」として核兵器の使用を仄めかしたのである。
この他、プーチン大統領の口から飛び出したのは―
「アメリカが世界の全ての罪を作っている。ドルの優位を使って世界を統治し世界の富を搾取している。アメリカはロシアを破壊しようとしているが、人々は軍に志願し伝統的価値を守ろうとしている」。
徴兵に反対する数千人もが逮捕されているのにもかかわらず、プーチンにかかったら「人々は軍に志願する」となる。
「すべてはアメリカのせいだ」。日本の反米原理主義者がよく口にするセリフである。
それをクレムリン発で聞こうとは思ってもみなかった。
~終わり~
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読者の皆様。
ロシアの核攻撃を受けてNATOが反撃すれば、第3次世界大戦に向けてヨーロッパの緊張は一気に高まります。
プーチンによる東部南部4州の領有宣言は、核攻撃の鏑矢となるのか。
どん底まで世界を突き落としそうな戦争の行方を、田中龍作に見届けさせて下さい。
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