【キーウ発】米系ラジオ局ジャーナリスト、ロシア軍のミサイル攻撃で死亡

ロシア軍のミサイル攻撃に遭ったアパート。『ラジオ・リバティー』のベラ・グリッチさんは遺体となって見つかった。=29日、キーウ市内 撮影:田中龍作=

 開戦から63日目、4月29日。

 暗殺だろうか、それとも偶然だろうか―

 昨夜8時10分頃、首都のど真ん中にロシア軍のミサイル2発が着弾した。

 現場の警察官によると1発目がアパートに落ち、間もなく2発目が政府関連施設に落ちた。

 アパートの住民1人が死亡、10人が負傷した。

 死亡したのはラジオ・リバティーのジャーナリスト、ベラ・グリッチさん。

 ウクライナジャーナリスト協会(National Union of Ukraine Journalist)のセルギー代表が明らかにした。

 ベラ・グリッチさんはウクライナ人だが、ラジオ・リバティーは米国と関係が深いメディアだ。

 ベラさんは朝方になって現場から遺体で見つかった。

住人の中心はアッパーミドルであるため、国外に避難しており、死傷者は比較的少なかった。=29日、キーウ市内 撮影:田中龍作=

 政府関連施設の中にはミサイルの研究開発機関が入っている。先日、ロシア海軍の旗艦を沈めたネプチューンミサイルの一部もここで開発された。

 アパートと政府関連施設は20~30mしか離れていない。

 プーチンは国連のグテーレス事務総長が滞在するキーウにミサイルを撃ち込んだのである。

 国連を中心とした第2次世界大戦後の世界秩序よりも、俺が支配する世界秩序の方が大事なんだ、といわんばかりのミサイル攻撃だ。

 国連事務総長滞在中のミサイル攻撃よりもキナ臭いのは、米系メディアのジャーナリストが住むアパートにミサイルが着弾したことだ。

 米国が世界中で運営する「ボイスオブアメリカ」や「自由ラジオ」は独裁者にとっては目障りな存在だからである。

 40mほど離れた別のアパートに住む男性は次のように語った。

 窓ガラスは爆風ですべて吹き飛び熱風が部屋に飛び込んできた。建物が地震のように揺れた。

 「撃ち返したい気持ちで一杯だが、私だったら民間施設は狙わず軍事施設だけを狙う。なぜなら我々はヨーロッパだ」。

政府関連施設にもミサイルが着弾した。ネプチューンミサイルなどを研究開発する機関も入っている。=29日、キーウ市内 撮影:田中龍作=

    ~終わり~

     ◇
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