開戦から63日目、4月29日。
暗殺だろうか、それとも偶然だろうか―
昨夜8時10分頃、首都のど真ん中にロシア軍のミサイル2発が着弾した。
現場の警察官によると1発目がアパートに落ち、間もなく2発目が政府関連施設に落ちた。
アパートの住民1人が死亡、10人が負傷した。
死亡したのはラジオ・リバティーのジャーナリスト、ベラ・グリッチさん。
ウクライナジャーナリスト協会(National Union of Ukraine Journalist)のセルギー代表が明らかにした。
ベラ・グリッチさんはウクライナ人だが、ラジオ・リバティーは米国と関係が深いメディアだ。
ベラさんは朝方になって現場から遺体で見つかった。
政府関連施設の中にはミサイルの研究開発機関が入っている。先日、ロシア海軍の旗艦を沈めたネプチューンミサイルの一部もここで開発された。
アパートと政府関連施設は20~30mしか離れていない。
プーチンは国連のグテーレス事務総長が滞在するキーウにミサイルを撃ち込んだのである。
国連を中心とした第2次世界大戦後の世界秩序よりも、俺が支配する世界秩序の方が大事なんだ、といわんばかりのミサイル攻撃だ。
国連事務総長滞在中のミサイル攻撃よりもキナ臭いのは、米系メディアのジャーナリストが住むアパートにミサイルが着弾したことだ。
米国が世界中で運営する「ボイスオブアメリカ」や「自由ラジオ」は独裁者にとっては目障りな存在だからである。
40mほど離れた別のアパートに住む男性は次のように語った。
窓ガラスは爆風ですべて吹き飛び熱風が部屋に飛び込んできた。建物が地震のように揺れた。
「撃ち返したい気持ちで一杯だが、私だったら民間施設は狙わず軍事施設だけを狙う。なぜなら我々はヨーロッパだ」。
~終わり~
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