開戦から15日目、3月10日。吹きつける冷たい風は頬を切りつけるようだ。
「ゼレンスキー大統領がポーランドに亡命政権を作る」「非武装中立を受け入れた」…プロパガンダがネット上を駆け巡る。
何があっても不思議ではないのが、国際情勢の常なのだが、仮に亡命したとしても、プーチン大統領が望むようなレジームチェンジとはならない。
国民の多くは骨の髄からモスクワが嫌いで、「体を張って戦う」と意思表示しているのだ。日本人には彼らの士気の高さがなかなか理解できない。
独立広場前でバリケードに土のうを積んでいた青年(20代後半)は、陥落した東部ハリコフから逃れてきた。
「私はこの8年で2回も戦争に巻き込まれたよ」。青年はまるで自虐ネタであるかのように話した。
田中が日本人ジャーナリストと分かると「日本はノーザン・テリトリー(北方領土)をロシアに取られたままでいいのか?」と逆インタビューしてきた。
当たり前のように領土愛を持つウクライナ人にしてみれば、北方領土を取られたままで何もしない日本人が理解できないのだろう。
東京の銀座にあたるフレシャーチク通りの黒海料理前で、店員が食材をトラックに積み込んでいた。開戦後、休業状態が続くため、腐らないように食材を冷凍倉庫に避難させるのかと思ったら、そうではなかった。
店員の一人は「軍に無償で届ける。ウクライナのためだ」と誇らしい表情で話した。
領土防衛隊に志願した15歳の少女兵は「(ロシア軍の陸上部隊が来たら)撃つ」と答える。
オッサンの隊員たちは「(ロシア軍を)殺す」と口々に言った。
自警団に参加する市民も少なくない。壮年の団員が中心だが、腰の曲がりかけた高齢の男性が、カラシニコフAK47を手にキエフ中心部をパトロールする。
ゼレンスキー大統領が希望者全員に武器を提供したこともあり、大量の武器弾薬が市中に流れている。
プーチン大統領が傀儡政権を打ち立てようとしても、国民がそれを許さない。凄絶な市街戦が繰り広げられることになる。
~終わり~
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カードをこすりまくりながらの現地取材です。
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