日本が無条件降伏文書に調印した1945年9月2日。スターリンはソ連国民に向かってラジオ演説をした―
対日戦争の勝利は日露戦争敗北の報復、雪辱であると強調したのである。
「この(日露)戦争でロシアは敗れた。その結果、日本は南サハリン(樺太)を掠め盗り、千島列島にどっかりと腰をすえ・・・」と口惜しさを露わにした。
スターリンの対日参戦の目的は南樺太と千島を奪回するにあった。
―以上、半藤一利著『ソ連が満洲に侵攻した夏』より
スターリンをプーチンと置き換え、日本をNATOと置き換えたらどうだろう。
プーチンは国営放送の番組で「NATOの東方拡大でロシアは領土の40%を失った」とまで言って悔しがっている。
領土への執着と執念深さにおいてプーチンはスターリン以上ではないだろうか。
スターリンは勝利のラジオ演説から4日後、モスクワから旅順に出向き、戦死者の墓に額づいたという。
プーチンはクリミア半島奪取(2014年)の際、旅順でロシア海軍が肝を冷やした自沈作戦をやってのけた。敵は違えど自らの雪辱を100年余をかけて成し遂げたのである。(自沈作戦は海軍の戦術の一つと言ってしまえばそれまでだが)
田中はプーチンのクリミア侵攻を現地で一部始終を見ていたが、荒業に心理作戦をまじえて目的を成し遂げる。KGBの将校出身だけあって情報戦においてNATOは太刀打ちできない。
一発の弾丸を撃つこともなく一ヶ月あまりでクリミア半島を陥れた。
プーチンはスターリン以上の戦略家であると見てよい。歴史の歯車を逆転させることなんぞ屁でもない。ウクライナ侵攻があっても何ら不思議はないのだ。
~終わり~