「戦争を知らない世代が半分以上になると危ない」と言ったのは田中角栄元首相(故人)だった。
筆者はよほどの事情がない限り、8月15日には靖国神社を取材することにしている。
25年くらい前までは、生き残りの将兵が戦友の御霊を弔うために参拝に訪れていた。
元潜水艦の乗組員たちは、敵艦にめがけて自爆攻撃に向かう戦友を送り出した。人間魚雷回天だ。ピリピリとした殺気が靖国神社の境内に垂れ込めていたのを思い出す。
政界は後藤田正晴、野中広務、梶山静六ら戦争を知る世代が官房長官を務めていた。3人とも軍隊経験のあるハト派だった。
タカ派で鳴る中曽根康弘が最高権力者であっても、平和憲法を逸脱するような政策は、後藤田が体を張って止めていた。
解釈で憲法を変えるようなことはあり得なかったのだ。
それから20以上が経過した。終戦の日の靖国神社の境内で参拝者に聞いた。
終戦時、小学3年生だったという男性(85歳)は「(日本軍は)インパール作戦なんて馬鹿なことやっていた」と話した。
男性は「憲法9条は宝」としながらも「解釈で憲法を変えられるから憲法の意味がない」と憂う。
無謀な戦争に突き進んだ当時の政府と、「Go to」を止められない今の政府とどこが違うのか。
さらに呆れるのがオリンピックだ。コロナが収束しなくても開催できるよう、9月に政府主導の対策会議を立ち上げるというのだ。巷間「ウィズコロナ五輪」と揶揄される。
検査も補償もせず感染拡大させ放題の国と東京都が音頭をとった狂気の祭典に参加したいアスリートがどれだけいるというのか。
一度始めたら破滅するまで止めらない日本。今度は「コロナ五輪」という焦土作戦で2度目の敗戦を経験しようとしている。(文中敬称略)
~終わり~