GWの悪夢 さまよえる医療難民

待合室の椅子はいっぱい。座れない人はエントランスに立ちっぱなしだった。=1日、都内クリニック。撮影:筆者=

待合室の椅子はいっぱい。座れない人はエントランスに立ちっぱなしだった。=1日、都内クリニック。撮影:筆者=

 文・竹内栄子

 「明日から始まるゴールデンウィーク。前半は好天に恵まれるでしょう」。テレビから陽気な声が流れてくるのを横目に、筆者は高い所にあるエアコンのプラグを入れようとしてスツールに足を掛けた。

 グラリ、とスツールが揺れ、左足がグキッとねじれた。膝の筋が無理に伸ばされた感触があり、まともに歩けない。4月27日金曜日の晩のことだった。

 とっさに考えたのは、病院が閉まっている、ということだ。GWに入ったということばかりがアタマの中を巡り、土曜診療の病院を探すことも思いつかなかった。横になっても寝返りが打てないほど痛い。いつもは就寝の際、夜中に暴れる猫たちをケージに入れるのだが、それも忘れていた。

 朝起きると今度は左足の小指に傷がついていた。赤く腫れている。猫のひっかきからバイ菌が入ったのだろう。幸い薬箱の中に抗生物質が残っていた。素人判断で抗生物質を飲み、膝の皿にはトクホンを貼った。左足は満身創痍なのに、病院が開くまでガマンしなければならない。

 5月1日になった。カレンダーが黒い日だ。近くの皮膚科に12時間際に飛び込んだが、待合室はびっしり。ざっと数えて15人待ちだ。仕事の合間に来たサラリーマン、お年寄り、幼児連れ、ヤンキーの兄ちゃん・・・

 やっとのことで名前を呼ばれて赤く腫れあがった足指を見せた。「今度こういう時は救急に行きなさい」と先生が言う。だってGWじゃないですか、とノド元まで出掛った言葉を飲み込んだ。次に整形外科に行き、帰宅したら5時を回っていた。

会計の電光掲示板。午後遅い時間まで人が途切れない。=1日、都内の総合病院。撮影:筆者=

会計の電光掲示板。午後遅い時間まで人が途切れない。=1日、都内の総合病院。撮影:筆者=

 GWには会社だけでなく病院も休診になる。だが連休であろうが、人は病気になるし、ケガをする。

 そんな中、年中無休で診療する病院があるという。1年365日診療を標ぼうする病院で週3日診察するという木村知(とも)医師に聞いた。GW中のカレンダーが赤い日も休診は無しだ。

 「連休中はもの凄く混むんです。盆暮れ・GWが一番忙しい。いい迷惑です。医療の質も落ちるし事故も起きやすい。開いているからといって “ 念のため受診 ” は止めてほしい」と木村医師はこぼした。

 「よそが全部休むから、患者さんも調べて電車に乗って来る。患者さんにとっても医師にとっても大変。医師会も交互に病院を開けるようにすればいいのだが、自分のクリニックは開けない。祭日の医療難民が増える」。

 病院が開いていない、どこに行けば、という不安な気持ちは医療“難民”だったからなのか。

 連休についてどう思うか、木村医師に聞いた。

 「連休がみんなのためになっているか疑問です。オリンピック開会式を祝日にするらしいが、熱中症の人の行き場がなくなる」。

 政府が経済需要や国家イベント目的で祝日を増やすと、医療難民が増えるばかりか、暑さで人がバタバタ倒れる阿鼻叫喚が出現するかも知れないというのだ。

 非正規労働者は稼ぎを失う。病人は医療が受けられない。まったく連休は弱者のためにならない。

  ~終わり~

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