映画ペンタゴン・ペーパーズ 「権力を見張らなければならない」

安倍内閣の総辞職を求める国民の声は日増しに高まる。ジャーナリズムはそれを反映しているだろうか。=首相官邸前 撮影:筆者=

安倍内閣の総辞職を求める国民の声は日増しに高まる。ジャーナリズムはそれを反映しているだろうか。=首相官邸前 撮影:筆者=

 何とも日本政治の現状と酷似している。トム・ハンクスを渡辺謙に、メリル・ストリープを大竹しのぶに置き換えても、何ら違和感はない。リチャード・ニクソンはアベ・シンゾーだろうか。

 これはベトナム戦争でアメリカの敗色が濃厚になっていた1971年に起きた実話だ。

 マクナマラ米国防長官(在職:1961〜68年)が作成を命じた「ペンタゴン・ペーパーズ」には、ベトナム戦争をめぐって4代の政権(トルーマン、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン)が隠蔽してきた膨大な情報が記されていた。

 暗殺、ジュネーブ条約違反、不正選挙・・・いずれか一つでも明るみに出れば政権は吹っ飛ぶ。

 最も罪深いのは歴代政権が「勝てない」と知りながら泥沼の戦争に突き進んでいったことだった。政権維持のために大統領や国防長官はウソをつき通したのである。その陰で夥しい数の若者がベトナムのジャングルで命を落とした。

 この現実に憤った人物がいた。ペンタゴン・ペーパーズの執筆に携わった軍事アナリスト、ダニエル・エルズバーグ氏だ。

 氏は機密書類のコピーをNYタイムズ紙に持ち込む。内部告発である。機密情報は政権を痛打する記事となり、全米が大騒ぎとなった。

 ニクソン政権は「国家の安全保障を脅かす」として記事の差し止め命令を連邦裁判所に出した。裁判所はこれを認め、NYタイムズ紙は掲載できなくなった。

トム・ハンクス(中央)演じる、ベン・ブラッドリー編集主幹は記者魂溢れる男だ。今の日本で探すのは至難の業である。

トム・ハンクス(中央)演じる、ベン・ブラッドリー編集主幹は記者魂溢れる男だ。今の日本で探すのは至難の業である。

 諦めないエルズバーグ氏はワシントンポスト紙に持ち込んだ。首都のローカル紙から飛躍したいポスト紙の編集主幹らは、超ド級のスクープの掲載に意欲をみなぎらせる。

 ニクソン政権は機密保護法違反でNYタイムズ紙を摘発するよう指示を出す。ポスト紙の情報源はNYタイムズと同一だ。

 マクナマラ元国防長官は、旧知のキャサリン・グラハム社主に忠告する―

 「記事を掲載すればニクソンは何としてでも新聞社を潰しにかかるぞ」。

 ポスト紙の役員や弁護士は掲載に猛反対した。だがベン・ブラッドリー編集主幹はたじろがなかった。

 掲載にあたってはグラハム社主も二の足を踏んでいた。掲載したい編集主幹との間で火の出るような論争があった。

 主幹が言った。「権力を見張らなければならない。我々以外に誰がやる?」鬼気迫る形相だった。

 ワシントンポスト紙は機密保護法違反に問われることも覚悟で掲載に踏み切る。輪転機が音を立てて回り始めた。

 同紙は翌年、ウォーターゲート事件の調査報道を始める。2年後の74年にはとうとうニクソン大統領を辞任に追い込んだ。

 政権を倒すか。政権に潰されるか。いま日本のジャーナリズムは似たような状況にある。

  〜終わり~

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