この国の最高法規は「日本国憲法」ではなく、国権の最高機関は国会ではない ― 日米間のタブーを告発し続けている作家・矢部宏治が、日本を支配する真相に迫った。
最高法規は米国との「密約」であり、最高機関は「日米合同委員会」である。著作を貫くのはこの2本柱だ。
2015年、安倍政権が集団的自衛権の行使を可能にする「安保法制」を強行採決した。「米国からの要請があった」といわれているが、70年以上も前から路線は敷かれていたのである。
「指揮権密約」だ。吉田茂とクラーク米軍司令官が1952年7月23日、口頭で交わした。
クラーク司令官が「戦争になったら日本の軍隊(当時、警察予備隊)は米軍の指揮下に入って戦うことをはっきり了承してほしい」と吉田に申し入れた。吉田は同意した。
これに先立つこと2年。1950年に日本は海外派兵している。朝鮮戦争開戦後、海上保安庁の掃海艇は米軍の指揮下で朝鮮半島沖に出動した。うち一隻が機雷に触れて沈没、死者1名、負傷者18名を出した。
「戦力を持ち」「海外で武力行使する」。憲法9条は、誕生からわずか3〜4年で破壊されていたのである。
軍隊の指揮権をあらかじめ他国が持っているとなると、完全な属国となる。言い訳のしようもない。絶対に公表できない。日本国民の目に見えるかたちで正式に条文化することはできなかったため、日本独立後、「密約」を結んだのである。
密約は指揮権ばかりでない。米兵の治外法権を可能にする「裁判権密約」。日本のどこにでも米軍基地を置ける「基地権密約」がある。
こうした密約を担保しているのが日米合同委員会だ。米軍施設である「ニュー山王ホテル」(東京・六本木)に置かれている。
日本側の出席者は、各省庁のトップ官僚であるのに対し米側は軍人だ。ここで決まったことは国会に報告する義務もない。憲法より上位に位置することは言うまでもない。
日米合同委員会は国権の最高機関であり、同委員会の権限を握っているのは米軍なのである。日本が米軍の支配下にあることは、戦後史を見ても一目瞭然だ。政権交代があっても、ここを変えない限り、日本は変わらないのである。鳩山政権の悲劇を忘れてはならない。
本著は陰謀論ではないのが特徴だ。「誰と誰がいつ密約を結んだのか」などを具体的に示している。
日本の現状にほぼ満足している方には、本著を読まないことをお勧めする。
〜終わり~
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