午前8時、朝凪の大浦湾にアメリカ国歌「星条旗」が響いた。
アメリカのオリンピック選手が金メダルを取ったわけではない。米軍キャンプシュワブが海兵隊員に朝を告げているのだ。
「ここは俺たちの海だぞ」と威圧しているようにも聞こえる。
沖縄防衛局は、昨日(12日)から米軍基地建設予定地でのボーリング調査を再開した。
これに抗議する人々とともに海に出た。主力は10数艘のカヌー隊である。田中は沖縄2紙と写真家の島崎ろでぃ氏とともにプレスボートに乗った。マスコミは沖縄2紙だけだった。
基地建設予定地をはるか遠巻きにフェンスが囲む。それでもフェンスの傍まで行くと海上保安庁の高速ゴムボートと沖縄防衛局の警備艇が並走してきた。
「ここは臨時制限水域です。法令違反となります。速やかに退去して下さい」。防衛局は壊れたレコーダーのように同じフレーズを繰り返した。
抗議船もカヌー隊もフェンスの外だ。内側は日米の共同管理区域となる。
抗議船の市民が拡声器を使ってやり返した―
「翁長知事は埋め立て承認を取り消しました。ODB(沖縄防衛局)こそ、この海から出て行きなさい」。
フェンスをはさんで国家権力と市民の攻防が繰り広げられた。30分も続いただろうか。突如としてカヌー10数艘が一斉にフェンスを乗り越えた・・・
海上保安庁の高速ゴムボート約10隻が、水しぶきをあげてカヌーを取り囲む。基地建設反対の市民を次々に拘束し、ボートに引き上げていった。
海上保安官が拘束時に手荒なことをするためグッタリとなっている市民もいた。
拘束された14人は、沖の離れ小島まで連行され、放免となった。現代の遠島だろうか。
高裁で争われることになるとはいえ、現在のところ国が辺野古の海を埋め立てる法的根拠を失っていることも事実だ。
防衛施設局や海上保安庁が市民に対して居丈高に「出て行きなさい」などと言うのは、憚られるのだ。まして暴力による排除などあってはならない。
憲法も法律も二の次。為政者が暴力で思いのままに事を進める。沖縄で起きていることは、いずれ全ての日本国民に降りかかってくるだろう。
~終わり~