クリミア半島につながるアゾフ海で11日、機雷が爆発する事件があった。
マリウポリのクライシス・メディアセンターが毎日開く記者会見で、爆発事件の内容を筆者は質問した。
当局者はウクライナ軍の見解として「ロシア軍が撒いた機雷がロシア海域で爆発した」と答えた。
釈然としなかった。当局者の説明にではなく、事件そのものが、だ。
老朽化し戦闘能力のないウクライナ艦艇が、ロシア海域まで行ってロシア艦艇と砲火を交えることなどできるわけがない。ロシアもそれは百も承知だ。
トンキン湾事件(1964年8月2日~4日)が頭に浮かぶ。トンキン湾事件は、ベトナム戦争への本格介入の口実がほしかった米政府が、北ベトナム軍による艦船攻撃をでっち上げた工作事件だ。この事件により、米議会は圧倒的多数でジョンソン大統領の北爆を支持した。
3月、クリミア半島に侵攻したロシアは、自軍の艦艇を沈めて港湾の入口を塞ぎ、ウクライナ軍の艦艇を封じ込めた。
大胆な作戦をいとも簡単にやってのけるのがロシア軍だ。トンキン湾事件レベルの工作など朝飯前といってよい。
ロシア軍と親露勢力がドネツク州内で着々と軍備を増強していることは確かなようだ。
海外主要メディアはOSCE(欧州安保協力機構)の停戦監視団やNATO幹部の話として、「ロシア軍の車両がウクライナ国境を越えてドネツク州に侵入している」と報じる。そして「全面衝突再開の恐れ」とタイトルを躍らせる。
ロシアがほしいのは、本格攻撃を仕掛けるキッカケだけだ。