2日夜、政府庁舎の占拠を目指すデモ隊で庁舎西ゲート前は埋め尽くされた。警察は増強につぐ増強で守りを固めた。
「2日の24時までに梁振英・行政長官が辞任しなければ、政府庁舎を占拠する」。学生たちが通告したデッドラインは刻一刻と近づいていた。
梁行政長官は、この日の早い時刻に辞任を否定している。政府庁舎占拠をめぐる警察とデモ隊の攻防は避けられない。誰もがそう見ていた。
警察が盾と棍棒を持った。筆者と一緒に動いている地元紙の記者が「ゴーグルとマスクを着けろ」と言うので着けた。
装着し終わった頃、デモ隊にチラシが配布された。「逮捕されたら●●●‐●●●番に電話を」と書かれている。香港版「救援センター」だ。緊張は高まった。
デッドラインの20分前だった。梁振英・行政長官の記者会見がトラメガ(拡声器)を通して流れた。「政府は学生の代表と話し合う用意がある」という内容だ。デモ隊から一斉にブーイングが起きた。
見事な肩すかしだ。学生が対話を拒否するわけにはいかない。
学生側も梁行政長官の提案を受け入れ、近く政府側と話し合いを持つことになった。
中国全人代が決定した選挙制度は、中国の意に沿った人物でなければ立候補できない。しかも中国がお墨付きを与えた人物を直接選挙で選ぶ。典型的な翼賛選挙だ。
デモは中国によるイビツな選挙制度の押し付けに反対して発生した。
中国の意を汲んだ香港政府が押し通すのか。学生が跳ねのけるのか。民主主義の根幹に関わる攻防は予断を許さない。