ビリビリと窓ガラスを揺らす どよめき が起きた。午後9時10分、NHKの選挙速報が山本太郎候補の「当選確実」を告げた瞬間だ。東京・高円寺の雑居ビルに設けられた山本氏の選挙事務所は歓喜に包まれた。
「タロー」コールが響くが、当人は至って冷静だ。
山本氏の選挙を支えたのは1,000人超のボランティアだった。大政党のように組織に頼った選挙ではない。とりわけ民主党のように「市民運動」を抱き込み、労働組合に頼った選挙でもなかった。
原発のタブーに触れたため仕事を干された山本氏が訴える「脱原発」は鬼気迫るものがあった。「放射性物質を子どもたちに食べさせてよいのか?」「国会議員はどうして本当のこと言わないんだよ?」……
瓦礫の焼却反対集会や再稼働反対集会には、いつもと言ってよいほど山本氏の姿があった。
訴えは原発問題だけに留まらなかった。この国を滅ぼしかねない「TPP」「非正規労働問題」というテーマにも山本氏は斬り込んだ―
「発ガン性のある遺伝子組み換え食品が入って来て僕たちはそれを食べさせられるんですよ」
「このままじゃ企業に殺される。過労死防止基本法を一日も早く制定する必要がある」
身近な問題であるにもかかわらず大政党が触れようとしない事柄を、分かりやすく、そして熱っぽく語った。
山本氏の演説を聞こうと聴衆が集まり黒山の人だかりができた。動員なしで、だ。人々の目は真剣だった。「孫を被曝させたくないからね」と涙を流す老女性もいた。この光景を見た時、筆者は山本氏の当選を予感した。
大政党やマスコミにとって最も不都合な男が政治の表舞台に踊り出る。市民一人ひとりの手で送り出した国会議員が誕生したのである。