有力6候補(定員5議席)による熾烈な選挙戦が続く東京選挙区。自民2議席、公明1議席以外はダンゴ状態だ。とりわけデッドヒートとなっているのが5位と6位の争いである。
マスコミ以上の精度を誇るある政党の調査によれば、5位は鈴木寛候補(民主)、6位は山本太郎候補(無所属)となる。どの候補も「当確速報」を信じ切るある報道機関の調査では、山本氏4位、鈴木氏6位となっている。
原発推進政党としてのバイアスもある。大組織に支援された候補者ほど投票数が多くなる期日前投票の出口調査ということも考慮に入れなければならない。
筆者は同じ条件で鈴木寛候補と山本太郎候補の街頭演説を比べてみた。街頭演説は候補者の勢いが素直に出るからだ。両者とも金曜日の夕方6時半頃。場所はJR山手線の駅頭とした。
先週金曜日(5日)夕方6時半頃、JR新橋駅SL広場(写真上段)。山本候補の演説に耳を傾ける聴衆で会場は埋め尽くされた。1,000人近い。山本氏は原発事故をめぐる政府やマスコミの対応の酷さを説く。聴衆の目は真剣だ。
今週金曜日(12日)夕方6時半頃、新宿西口(写真下段)。鈴木候補の演説を聴きに集まった人の数は100人ほど。山本氏の10分の1くらいか。民主党きっての人気者である細野豪志幹事長が応援に駆けつけても、このありさまだ。
聴衆に聞くと大半は「細野さんは知っている」「鈴木さんは知らない」と答えた。それ以上に印象に残っているのは、皆ボンヤリした目で突っ立っていたことだ。
演説終了後、鈴木候補が聴衆に握手を求めて歩いた。男女、それぞれで固まって手を出すグループがいたから、労働組合の動員もあったのだろうか。
山本候補の場合、学生からお年寄りまで老若男女が山本氏の握手を求めて長い列を作る。自ら握手を求めて歩く鈴木候補と実に対照的だ。
経産官僚出身の鈴木候補は、民主党が政権の座に就くと文部科学副大臣となった。そして2011年3月11日の大惨事を迎える。文部科学省はSPEEDIのデータを福島の住民に見せず、その後も福島の子どもたちに20mSv/年までの被曝を強いた。副大臣だった鈴木氏は重大な責任を負っている。
「子どもには無限の可能性がある。それが摘まれそうになっているのを目の当たりにすると居ても立ってもいられない…」。鈴木候補はこう声を張り上げた。
筆者は奇異に感じた。「福島の子どもたちを不必要に被曝させたのは誰なんだ?」と。
「3年間何やってたんだ?信じないぞ」。会場からヤジが飛んだ。
「この人たち本当に自覚がないですね。なんか(有権者と)温度差があるなあ」。50代の男性有権者は、鈴木陣営の運動員にクレームをつけ去って行った。
前回(2007年)の参院選で筆者は鈴木氏の選挙戦に密着取材したが、どこに行っても有権者は熱烈な拍手で迎えた。勝手連は選挙運動を盛り上げていた。あれから6年。別人の選挙を見させられているようで仕方がない。