「エッー」悲鳴のようなブーイングが起きた。高円寺のカラオケハウスを借り切って設えられた山本太郎陣営(無所属)の開票センター。午後8時過ぎテレビニュースが対立候補の当選確実を速報した瞬間だった。
山本氏が選挙出馬を表明したのは公示直前の今月1日だ。「枝野さん、細野さん。この国のすべての人を被曝させた民主党は戦犯です。野田さんもそうです。首狩り族の一人として僕は行く必要がある」。悲壮なまでの決意だった。
「脱原発、反TPP、反消費税、反憲法改正を唱える候補に入れて下さい」。
山本氏は街頭演説で繰り返した。「1%の人の利益のために99%の僕たちがなぜ生贄にならなくてはならないのか?」という理由からだ。
主張を同じくする候補と党派の垣根を超えて共闘してゆきたい、が口癖だった。千葉4区で野田首相への刺客に立った三宅雪子候補(未来の党)の応援に駆け付けたりもした。
山本候補の選挙を支えたのは約300人のボランティアだった。九州、近畿、北関東などから「手伝いたい」と言って駆け付けてきたのである。寝袋持参で京都から“押し掛けてきた”学生もいる。
「健康に生きたいだけ。次の世代にバトンタッチしたいだけ」。山本氏の訴えは、とりわけ子を持つ母親たちの共感を呼んだ。
「田舎から東京に出てきて10年経つが、今回初めて選挙に行く。原発事故が起きるまでは選挙に全く興味がなかった。自分の票が大切だと教えてくれたのは太郎さんだった」。4歳の子供を抱いた母親(地元・杉並有権者=30代)は切々と語った。
山本候補は、孫の将来を危ぶむ高齢者からも好感を得ていた。ビラ配りのボランティアに「(太郎氏に)期日前投票で入れたからね」「入れるからね」と声をかけるお年寄りが少なくなかった。
組織に頼らず生活者一人ひとりの心に訴え続けた山本太郎氏だったが、業界票と学会票で固めた石原伸晃・前自民党幹事長の後塵を拝する結果となった。「原発ゼロを目指さない」と言い切る慎太郎前知事の高笑いが聞こえるようだ。