「伊方の龍神様が怒っとる。原発のために祠を勝手に移動させた。核と人間は共存できない。福島の次は伊方でないかと凄く怖かった。伊方の下にも断層が走っとる。国は国民を守らない。国民の声を聞かない。みんなの声で(再稼働を)止めるしかない」――
こう訴えているのは伊方原発から10キロ圏内に住む高齢の女性だ。鬼気迫るスピーチは、年齢を感じさせない。
大飯原発の次に再稼働すると目されている伊方原発は、四国を横断する中央構造線の真上にある。もし大規模地震に襲われれば制御棒が原子炉に入るのが間に合わず、大事故を引き起こす可能性が高い。
狭くて浅い瀬戸内海は瞬く間に放射能汚染されるだろう。瀬戸内の漁業は壊滅的となる。四国、山陽、九州北部の野菜も放射能を被ることになる。
原子力規制委員会人事の国会採決が目前に迫る19日、「ストップ伊方原発再稼働 止めよう大飯原発 8・19松山行動in愛媛」集会が開かれた。
「伊方は地元だ」。危機感を持った人々約400人が全国から松山市の堀之内公園に集まった。昼過ぎに集会が始まって間もなくすると、空は一転俄かにかき曇り猛烈な雷雨が襲ってきた。前方が見えないほどの豪雨と空が割れるような雷音だ。参加者たちはテントに避難したまま身動きがとれなかった。
自然の前に人間は無力であることを「再稼働反対集会」で思い知らされたのであった。天の啓示だろうか。
会場を公園内の愛媛県立美術館の講堂に移して集会が続けられた。東京、富山、尾道…各地から駆けつけた25人が短いスピーチをした。「伊方の戦いは私たちの戦いである…(中略)…伊方の希望は志賀の希望である。その逆もある…」。北陸電力・志賀原発の再稼働に反対する富山県の男性(40代)の言葉だ。
狭くて地震の多い国土に住む日本人にとって、原発とは一蓮托生なのだ。原発がある限り不幸で恐ろしい運命から逃げられない。
20日には集会参加者たちによって「再稼働阻止をめざす全国ネットワーク」が結成される見通しだ。
《文・田中龍作 / 諏訪京》
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