超格差社会に抗議して庶民が占拠を続けるウォール街。ハロウィンの今日、アメリカの病理を網羅する寸劇を占拠者たちが披露した。登場人物ごとに紹介する―
大学院の修士課程を借金して卒業した男性は、教育ローンの爆弾を抱える。演じている男性も実際に修士号を持つが、非常勤講師の仕事しかない。「スーパー・オーバー・エデュケーテッド」と自嘲を込めて語った。
ワーキングマザーは3つの仕事をこなしながら2人の子供を育てる。そんな彼女に解雇通告(ピンクスリップ)が突き付けられる。だが彼女は負けずにピンクスリップにパンチをぶちかます(写真上段)。
スーパーマンを戯画化した「Unemployed Superhero」は履歴書の達人だ。「500通出しても採用されない」と自己紹介した。
アウトソーサー(派遣会社)は、「あなたのすべての仕事を消滅させる」と“豪語”する。
「緊縮財政(小さな政府)の斧を持つ男」は、ワーキングマザー、修士など庶民を切りまくる。見物人からは「軍事費は削らないのか?」とヤジが飛んだ。
「ニューヨーク・スロット・エクスチェンジ」は、金融の総本山である「ニューヨーク・ストック・エクスチェンジ(証券取引所)」にスロットマシンを引っ掛けた『怪物』だ。
ボディーに「我々はあなたたち(国民)を賭け(投機)の対象としている」と宣言している。怪物は庶民の金を吸い上げる。吸い上げられる庶民の首には「我々は食べるために長時間働かねばならない。強欲なあなたたちのせいだ」とプラカードが。(写真下段)
そして、最後は登場人物全員で「ニューヨーク・スロット・エクスチェンジ」と「緊縮財政の斧を持つ男」をやっつけて終わる。
素人による三文芝居だが、あまりにも現実的過ぎて筆者は笑うに笑えなかった。程度の差こそあれ、現状は日本と同じだ。「ワーキングマザー」は生活苦にあえぎ、市場原理主義の鬼っ子である派遣会社は労働者を貧困のどん底につき落とす。
ハロウィンはアメリカ中にお化けが出る日。「強欲資本主義」というお化けは、アメリカのみならず世界に横行し庶民の生血をすすっている。