新聞・テレビが伝えない官僚の困惑と憂い

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「大新聞・テレビによって作られた世論だけが表に出る」と話す小沢元代表。(15日、旧全日空ホテル=東京・港区。写真:筆者撮影)

 15日、都内のホテルで開かれた小沢一郎・元民主党代表の政治資金パーティーに出席した。パーティーの参加費は2万円。筆者のような貧乏記者には目も眩むような金額だ。出席できるわけがない。顔見知りの警視庁SPから肩を叩かれて「どうしてここにいるの?」という意味のことを言われた。マスコミ・シャットアウトのパーティーだからだ。
 裏を明かすと、元トップ官僚から「田中さん、僕の代わりに行って記事にしてくれ」と入場券を託され出席することになったのである。
 小沢氏は菅-仙谷ラインから政倫審出席を迫られて厳しい立場にある。会場には500人を超す支持者が集まった。
 登壇した小沢氏は時候の挨拶もそこそこに菅政権の病根を指摘した。
 ――「一番の問題は責任ある地位にある人が自分の責任で判断しないことにある」。尖閣沖事件で那覇地検に責任をなすりつけたような不手際が相次ぐことを批判したものだ。
 「役人の天下になって役人が喜んでいるように言われているが、役所のなかにも今日の内外の状況を『深刻だ』と憂えている人は本当にいる。だが役所の既定路線を役人の側から変えることはできない。役所から使者が来て『困った、困った』と言ってる。基本方針を決めるのが政治家である。これこそが政治主導なのだがそれができていない」――

 テレビのコメンテーターは「菅政権は官僚の言いなりになっている」としたり顔で言う。確かにそうなのだが、当の官僚が頭を抱えてもいるのだ。
 官僚のトップと言われる事務方の官房副長官を長く務めた石原信雄氏がこんなことを話してくれた。「『この政治家のためなら我々官僚も尽くそう』、そう思わせるだけの政治家がいないから内閣がフラフラしている」。
 
 筆者は別に小沢支持者ではない。側近政治と言われながら側近と言われる人たちが次々と小沢氏と袂をわかった。独断専行の政治手法に嫌気が差したのである。小沢氏自身も反省すべき点だ。
 【元財務官僚 「財源はできる」】
 財務官僚出身のある衆院議員はこう語る。「政策では小沢さんの方が菅さんより数十倍上。小沢さんはどこから金を引き出すかを知っている。小沢さんのやり方で財源はできるんです」。9月の代表選で菅首相を支持した議員でさえこう語るのである。
 政権交代の直前直後、記者クラブメディアは執拗に「財源の裏打ちがない」と喧伝した。小沢氏の記者会見でも各社は何とかの一つ覚えのように「財源はどうするんですか?」と質問した。
 新聞・テレビが伝える小沢氏の政策は、事実ではないのだ。代表選で記者クラブメディアがなりふり構わず応援した菅首相率いる政権は、財源なきバラ撒きや効果の定かでない減税で迷走を続ける。ツケは必ず回ってくる。それも庶民に。
 「田中さん、行って書いてくれ」。某省の審議官まで上りつめた元トップ官僚が筆者に出席を託した意味がわかった。

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