「小沢一郎、強制起訴」の裏で蠢いたのは…

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検察審査会の議決要旨。「小沢一郎こと小澤一郎、別紙犯罪事実につき起訴すべき」とある。(4日、東京地裁前の掲示板。写真:筆者撮影)

 「小沢氏、起訴相当」の第一報に接したのは4日午後3時半、民主党本部で岡田克也幹事長の定例記者会見を待っていた時だった。新聞・テレビの記者たちは一斉にザワつき始める。携帯電話には社のデスクから指示がひっきりなしに飛び込んでいた。
 岡田幹事長の記者会見が始まると質問は「小沢氏への離党勧告」に集中した。岡田幹事長は「本人が考えを明らかにする前に私からコメントすることはできない」と述べるに留まった。言葉は慎重だが、表情はすっきりとしている。
 反小沢で鳴る牧野聖修議員は「公党としてのけじめをつけるために離党勧告なり除名なりに持っていくべき」と強気だ。
  仙谷官房長官は民主代表選前に「小沢強制起訴」を知っていた
 それにしても釈然としない。検察審査会は起訴相当に至った理由として、「会計責任者(石川知裕、大久保隆規両被告)が小沢氏に報告、相談したとする供述には信用性が認められる」としている。
 厚労省の元局長の無罪が確定した郵便不正事件でも裁判所は供述の信用性を否定しているのである。大阪地検特捜部の前田恒彦検事による証拠隠滅事件で改めて明らかになったのは、供述内容が検事の都合のいいように持って行かれてしまうことだった。
 小沢氏をめぐる事件で石川被告は「供述は誘導されたもの」として公判では否認する方針を固めている。大久保被告の場合、証拠隠滅で逮捕された前田検事が取り調べに当たっていた。前田検事が引き出した供述が果たして信用できるのだろうか。
 さらに首を傾げたくなるのが検察審査会による「起訴相当」の議決が出たのが、9月14日という点だ。この日は民主党の代表選挙の投票日だった。起訴相当を議決する場合は事前に検察に相談しなければならない(※筆者注)。当然、検察庁は法務大臣に報告する。当然、政敵の小沢氏を屠りたい一心の仙谷官房長官まで情報はあがる。
 当初、国会議員票は小沢陣営が優勢だったが、投票日(14日)直前になって民社協会をはじめとする国会議員がなだれを打って菅陣営に寝返った。
 「起訴相当議決にあたって審査会から検察へ事前相談があった。小沢は強制起訴されるよ」・・・第一級の情報が仙谷官房長官周辺から中間派議員に密かに流されたということは考えられないだろうか。
「検察不祥事」報道遅らせた!?朝日新聞
 もうひとつ腑に落ちないことがある。検察の信用を根底から覆した朝日新聞のスクープが出たのは9月21日だった。これがもっと早く出ていれば議決に少なからぬ影響を与えただろう。この報道をめぐっては「朝日はもっと早くからつかんでいたが、掲載する日を遅らせた」との見方がある。
 検察が証拠物件まで改ざんしていたことが、民主党代表選挙以前に明るみに出れば選挙の結果は違ったものとなっていた可能性がある。
 記者クラブ利権を固守したい新聞・テレビは「反小沢」「菅支持」で足並みを揃えていた。朝日新聞は特にその傾向が強かった。
 平均年齢30・9歳という検察審査会の柔らかい頭に「小沢=クロ」のイメージを擦り込んできたのも新聞・テレビだった。記者クラブメディアは「小沢強制起訴」に手を貸した、と言ってよい。

※筆者注
【検察審査会法】第41条の6(起訴議決)の2
検察審査会は、起訴議決をする時は、あらかじめ検察官に対し、検察審査会議に出席して意見を述べる機会を与えなければならない。

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