パレスチナ人に水が行き渡らない3つの理由

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爆撃で破壊されたビル跡には水道管も吹き出す水も見当たらなかった(ガザ市のハマス政府庁舎跡。写真=筆者撮影)

 映画「アラビアのロレンス」で他民族の井戸水を断りなく飲んでいた男が撃ち殺されるシーンがある。身を焦がすような強烈な陽射しと行けども行けども続く砂漠の中で暮らす民族にとって、水は命そのものだ。

 イスラエル優位のパレスチナ情勢を作った第3次中東戦争(1967年)の原因の一つは、ヨルダン川の水源問題だった。ヨルダンとイスラエルを分かつヨルダン川は、京都の鴨川程度の水量しかない。この水を奪い合って戦争が起きるのだから、パレスチナの地にあって水は、どれほど貴重品かがわかる。

 パレスチナの水をめぐってアムネスティ・インターナショナルが27日、報告書を発表した。112ページから成る報告書は大筋で「イスラエルはパレスチナ人が十分な水の供給を受けることを妨げている」という内容だ。

報告書によると――

・パレスチナ人はイスラエル国民の4分の1しか水を消費していない。パレスチナ人は7リットルなのに対してイスラエル国民は30リットル(日量、1人当り)。

・パレスチナ自治区の雨水貯水槽をイスラエル軍が破壊。

・パレスチナ民家屋上の貯水タンクはイスラエル軍の射撃練習の標的とされている。

・パレスチナ自治区に水を輸送するタンク車がチェックポイントに止められたままとなった。

・昨年末から3週間余り続いたイスラエル軍のガザ攻撃では、金額にして600万ドルに相当する水道インフラが破壊された。~筆者もイスラエル軍の銃撃によって壊されたというポンプを見た。
 

 アムネスティに指摘されるまでもなく、水をめぐる不平等はイスラエルとパレスチナの力関係を象徴するものである。
 
 特にガザ地区は飲み水にも不自由する。一方でユダヤ人入植地では青々した庭の芝生に散水し、プールでは子供が水しぶきを上げる。
 
 パレスチナ自治区もイスラエルも、地下の帯水を汲み上げる。イスラエルが高性能ポンプで水を大量に汲み上げるため、帯水の水圧は低くなり地中海の海水が地下に浸透する。
 
 このため、ガザ地区の水道水は塩辛い。歯を磨いた後、ノドが乾いて仕方がなかったことを覚えている。

 アムネスティの批判に対してネタニヤフ首相のスポークスマンであるマーク・ネゲフ氏は次のように反論する。「国際社会からこの5~10年の間、数十億ドルもの援助金をもらいながら水道インフラの建設をなぜ怠ってきたのか?」
 
 国際社会からの援助金はパレスチナ自治政府が一手に引き受ける。そして汚職まみれの自治政府幹部のポケットに直行する。ネゲフ氏の指摘は自治政府の本質を突いている。
 
 とは言え貴重な水資源であるヨルダン川も地下の帯水もイスラエルがほぼ独占している状態だ。パレスチナ側が仮に水道インフラを充実させても、そもそもの水源がないのである。

 パレスチナ人に水が十分行き渡らない三大理由は「イスラエルとの戦争」「帯水を奪われる」「自治政府幹部の汚職」である。

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