中小・零細企業の借金返済を3年間猶予する、とした「亀井モラトリアム法案」。慎重な姿勢を見せる民主党との間の温度差をメディアに指摘されてきたが、落ち着くところに落ち着いた。9日夕、亀井金融相と連立与党は▼返済猶予期間を3年とし、期間を1年に限った時限立法とする▼融資した元金利には政府保証をつけることなどで合意した。
平成の徳政令ともいわれる借金返済猶予は、庶民の味方なのか、はたまたモラルハザードとなるのか。亀井大臣の戦闘的なもの言いとも相俟って賛否両論が渦巻いた。
事の発端は今年3月にさかのぼる。民主党金融対策チームが「国民生活を守る『緊急資金繰り対策』をまとめた。この中に、資金繰りに苦しむ中小・零細企業を対象にした「元本返済猶予」があった。銀行出身の中堅議員(当選5回)の提案である。返済猶予は元本のみで利子は払う、とされていた。猶予期間は2年である。(亀井金融相案では基本的に元本、利子とも猶予。猶予期間は3年)
中堅議員の提案に小沢代表と鳩山幹事長(両者とも肩書きは当時)は乗り気だったが、直嶋政調会長(当時)の反対でマニフェストには盛り込まれなかった。マニフェストに書いていたら今回の“騒動”はなかった。
返済猶予は「貸付条件の変更」にあたるもので3党合意に謳われている。亀井大臣の主張の根拠でもある。「貸しはがしを防ぐための貸付条件の変更」は、いかようにも解釈できるため、混乱の原因ともなった。
亀井モラトリアムは民主党案と比べ大きく前のめりとなった。国会会期中であれば、野党から閣内不一致と追及されていただろう。だがメディアの騒ぎとウラハラに上記の返済猶予を提案した民主党議員側は、平然としていた――。
ベテラン秘書がニンマリと解説する。「亀井さん一流の高い目標設定だ。おかげで、ウチが主張した返済猶予は陽の目を見るよ」。もし亀井大臣がブチ上げなかったら、銀行業界あげての反対で法案化の行方は怪しくなっていたかもしれない。亀井大臣の功績は小さくないのである。
9日昼、金融庁で持たれた記者会見が終わった後、筆者は「大臣の思う線に落ちそうですね」と水を向けた。
「俺は最初からこうなると思ってたよ」。亀井氏は、してやったりの笑みを浮かべた。
数時間後、亀井大臣の意向にほぼ沿った原案が連立与党から出され、亀井氏は了承した。
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