読者諸氏もご存知のように自民党は1993年8月にも下野している。だが、森キロウ幹事長(後に首相)らが暗躍、社会党(現・社民党)を抱き込むという超ド級の裏技を使い、わずか10ヵ月後に政権の座に復帰した。
自民党は確かに野党となったが、決して総選挙に敗れたのではなかった。むしろ選挙前より1議席(222議席→223議席)増やしているのだ。
細川護煕・元熊本県知事が結成した「日本新党」や自民党を飛び出した小沢一郎氏らが作った「新生党」が爆発的に多くの議席を獲得し、非自民勢力(7党1会派)を結集し衆院の過半数を握った。その結果、自民党は下野したに過ぎないのだ。今回の衆院選のように歴史的惨敗の果てに野に下ったのと、全く様相が異なる。
「自民党壊滅」「自民党消滅」などといった見出しが週刊誌や夕刊紙上に踊る。それらの紙面・誌面にありがちな誇張ではないようだ。
181議席も減らしたことも強烈なダメージだが、それ以上に致命的なことがある。勝ち残った、あるいは比例復活したお歴々が旧態依然とした政治スタイルでまたぞろ自民党を牛耳ろうとしていることだ。
若手が「改革を!」などと叫んでも早晩、お歴々に鎮圧されるだろう。激減したとは言え最大派閥の町村派を率いる森キロウ元首相が、総裁や幹事長ポストをほぼ意のままにできるからだ。公認権を楯に「来年の参院選では公認しないぞ」などと脅せば、半分以上は簡単に切り崩せる。これは実証済みだ。第一ホントに骨があり、選挙にも勝ち残れる若手は片手で数えるほどしかいない。
間もなく出来レースの自民党総裁選が繰り広げられるだろう。「興行師」兼「脚本家」は森キロウ元首相だ。
こうした「興行」に代表される国民不在の政治スタイルに有権者が「ノー」を突きつけたのが、今回の選挙結果だった。見たくもない出しものを幾度も見せ付けられたら、本気で嫌気がさす。「今回だけは自民党以外に投票した」と言う自民党支持者さえも、半永久的にソッポを向くようになるだろう。
来夏行われる参院選も情勢は自民党に厳しい。参院選は業界が中心となって票を集める選挙だ。不健全で再生困難な野党の自民党に選挙支援するほど業界は甘くない。いつ会社が潰れるかわからない御時世だ。業界団体は医師会の例が示すように「自民離れ」が進行している。
東京オリンピック開催に伴う再開発でひと儲けを狙っていた森キロウ元首相は、オリンピックが絶望的となるや、「民主党とスポーツ界の橋渡し役になりたい」などと口走り始めた。スポーツ振興利権は野に下っても死守したいのだろう。
私腹を肥やし、キングメーカーを気取ることしか能がない森キロウ元首相。彼に代表される古色蒼然とした政治家が退場しない限り自民党は消滅する。もっとも早ければ来年夏の参院選後だ。
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