その年、最も過酷な労働を強いた会社に贈られるブラック企業大賞(主催:同実行委員会)。2016年は「電通」となった。きょう都内で授賞式が行われた。
電通の受賞理由は、2015年に24歳の新入社員高橋まつりさんが過労自殺したことで明らかになった、「鬼十則」という精神訓が重要視される組織体質にある。
電通は過去にも男性社員が過労自殺しているのに改善策を講じなかった。今年10月には厚労省から強制捜査を受けている。
電通への「ブラック企業大賞」授与式が行われ、主催者が授賞理由を読み上げた。
「電通は社会的に決して許されない人権侵害を続けた代表的企業である。ここに、強い怒りを込めて「ブラック企業大賞2016」の大賞を授与する」。
業界賞は、一時期TVコマーシャルをさかんに打っていた「株式会社プリントパック」だ。
新入社員が印刷機に巻き込まれた死亡事故を起こした「プリントパック」。組合員への差別的扱いなどの不当労働行為を行った。
ウェブ投票賞と特別賞を受賞したのは「日本郵便株式会社」。パワハラによるストレスで郵便局員が死亡するなど、パワハラ問題が全国で指摘された。
ブラックバイト賞はレストラン「しゃぶしゃぶ温野菜」の加盟企業DWEJapanだ。アベ首相がメディアを連れて会食したしゃぶしゃぶ屋さんではない。
同社はアルバイト学生に4か月の連続勤務を強いたり、自腹購入させる、暴力をふるうなどした。また「4千万円の損害賠償を請求する」などと脅したため、学生はブラックバイトユニオンに逃げ込んだ。
電通で過労自殺した高橋まつりさんの母親がメッセージを寄せた。
「社員の命を犠牲にして、業績をのばして、日本の発展をリードする、優良企業といえるのでしょうか。娘の死はパフォーマンスではありません、フィクションではありません。現実に起こったことです」。
「経営者は、社員の命を預かっているのです。大切な人の命を預かっているという責任をもって本気で改革に取り組んで頂きたい」。
「政府には、国民の命を犠牲にした経済成長第一主義ではなく、国民の大切な命を守る日本に変えてくれることを強く望みます」。
一人娘を会社に殺された母親が、アベ政権を痛烈に批判した瞬間だった。
~終わり~