アベ首相の唱える「同一労働・同一賃金」が、いかに戯言であるかを示す裁判が15日、結審する。
同じ仕事をしているのに正規社員の半分しか収入がないのは、「労働契約法20条に反する」として会社を訴えた非正規労働者たちが、今朝から東京地裁前で座り込みを始めた。
座り込んだのは原告4人。東京メトロの売店で働く非正規労働者だ。地下鉄の売店で正規社員と全く同じ内容の仕事をしている。
原告は正規労働者と同等の待遇を求めているほか、賃金格差などに対する損害賠償を請求している。
原告はメトロコマースの売店80数店舗での労働内容、時間を10年に渡って克明に記録しており、それを裁判所に提出した。同じ売店で働く正規社員と非正規社員の仕事内容に変わりがないことを示すためだ。
だが吉田徹裁判長は弁論準備で「実態より制度」と述べたという。被告であるメトロコマースの主張に沿う見解である。
原告たちは結審を間近に控えて裁判長に理解を求めるため、師走の寒風にさらされながらも座り続ける。
非正規労働者は今や全労働者の4割を占めるに至った。原告の訴えが認められれば、非正規労働者2,025万人にとって朗報となる。
応援に駆けつけた練馬区の女性(60代)は、終身雇用の下、ひとつの会社で42年間働いてきた。子供2人を育てあげた。年金も十分にある。
彼女は終身雇用が崩れたことを憂う。「(非正規社員は)契約更新のたびにビクビクしなければならない。結婚なんてできやしない。孫も非正規労働者になりそう」。
12日朝、東京地裁前―
メトロコマース原告の座り込みを取材していると、「過労死にNO!」と書いたゼッケンをつけた別の原告団がチラシを配っていた。
専任教員の6分の1しか収入がないのは「労働契約法20条に違反する」として大学を訴えた非常勤講師の男性が、陳述のため入廷した。
働いてまっとうな賃金を得ることができなければ、ふつうに生活していくことも難しくなる。「雇用崩壊」は「生活崩壊」である。
「生活崩壊」を東京地裁がどう判断するのか。メトロコマースの非正規社員が「同一労働同一賃金」を求めた裁判の判決は来年3月に言い渡される見通しだ。
~終わり~