「武力攻撃切迫事態と存立危機事態の具体的な違いは何か?」「どこで重要影響事態が起きるのか?」・・・
脳が腸ねん転を起こしそうなほど難しい議論が連日、国会で繰り広げられている。
安倍首相はじめ中谷防衛相、岸田外相の答弁も判然としない。何を言っているのか、自分でさえ分かっていないのではないだろうか。
彼らはそれでも余裕だ。いざとなったら特定秘密保護法がある。「外交」「防衛」は特定秘密指定項目に入るため、政府は国会や国民に対して説明をする必要がないのだ。
安倍首相は国会答弁で武力行使の根拠となる情報が特定秘密となる可能性を「極めて限られる」としながらも認めているのだ(2014年10月6日、衆院予算委員会)。
都合の悪いことは隠そうとするのが政権の属性だが、安倍政権は特にそれが顕著だ。
秘密保護法対策弁護団の海渡雄一共同代表は、 安倍政権の言論統制を憂慮する。次のように明かした―
批判的な報道をするメディアに対して官邸から「あのような報道は控えてもらえないだろうか?」と電話がかかってくる。
官邸の圧力がなくてもマスコミはすでに自己規制している。
「ISILによる人質事件をめぐる政府対応には誤りはなかった」とする検討委員会の報告書が5月21日に出た。ウソで塗り固められているのだが、マスコミは厳しく追及しない。核心には触れないのだ。
官邸はマスコミをほぼ完ぺきに統制下においた。こちらの「アンダーコントロール」は真実だ。
コントロールの利かないフリーランスには実力行使だ。フリーカメラマンからのパスポート没収は序の口だった。最近では経由地にさえ入れさせないようにしている。
知人のフリージャーナリストはイスタンブールで入国を拒否された。トルコの入国管理官が「あなたが何故入国拒否になっているのか、分からない。上が決めたことだから」と言ったという。
シリア報道で実績のあるフリージャーナリストをシリアに行かせないようにするために、日本外務省がトルコ政府に依頼したのである。
フリーランスさえも安倍政権の管制下に置けば、不都合な真実は明るみに出ようもない。
米国の意向を受けた安倍政権が自衛隊を地球の裏側まで派遣する時は、ウソ八百を並べたてるだろう。
だが、ウソを暴こうにも誰も暴けない。マスコミはもとよりフリーランスも官邸に押さえ込まれているからだ。
ブッシュ政権は「大量破壊兵器がある」と吹聴し、イラクに攻め込んだ。メディアは一斉に拍手を贈った。結果は改めて言うまでもない。
今度は米国にではなく安倍政権に騙される。
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