ガザ東部のアル・シジャーイヤに向かうレスキュー隊の救急車に同乗した。レスキュー隊は救急車、消防車、大型ブルドーザーの20台余りから成る。
イスラエルとの国境の町、アル・シジャーイヤは、イスラエル軍が雨あられのごとく爆撃を浴びせており、おびただしい数の死傷者が出ているものと見られる。
国境沿いの畑は対戦車地雷源になっており、中心部の住宅街に入ると道は迷路のようになる。
「迷路のようになっているのはイスラエル軍をおびき入れて せん滅する ためだ」。ハマスより過激といわれる「イスラム聖戦」の兵士がこう話していた。
イスラエル軍がアル・シジャーイヤに猛爆撃を加えるのは、先に叩いておかねば自らが危なくなるからだ。もちろんハマスの地下施設を見つけ出し潰すのが第一義だ。
民家がハマスの地下トンネルにつながっていたりするため、民家も破壊される。トンネルの入り口を探すのに家人は邪魔になる。虐殺はこうした際、発生する。
アル・シジャーイヤに向かう途中、救急隊員は言った。「You will see new Holocaust 」と。
レスキュー隊は負傷者を一刻でも早く助けだすために、アル・シジャーイヤへの道を急いでいた。
近づくにつれ爆撃音は大きくなった。無人攻撃機の飛行音がいつも以上に騒々しい。低空を飛んでいるからだろう。
アル・シジャーイヤの入り口に差しかかった時だった。レスキュー隊の車列はブレーキを踏んだ。イスラエルの爆撃が激しくて入れないのだ。
1時間ほど待つとレスキュー隊の隊長から説明があった。「10時(3時間前)から国際赤十字を通して『シジャーイヤに入れさせろ』とイスラエルに要請しているが、イスラエルは拒否したままだ」。
国際赤十字は「2時間の人道停戦」をイスラエルに持ち掛けたが、断られたのだ。
救急車、消防車、ブルド-ザー、約20台は、やむなくUターンした。またしても救える命が救えなくなったのだ。
若き隊員は力なく話す。「人々を救いたくてレスキュー隊員になった。(入り口で引き返すことになり)大きな挫折感を覚えている。とても悲しい。イスラエルは病院であろうが容赦しない。尊敬はできない」。
隊員たちは肩を落としながら引き揚げていった。「ドーン」。轟音とともにアル・シジャーイヤの方角から黒い雲があがった。
それから2時間30分後、イスラエル軍は 救急車に限って アル・シジャーイヤに入ることを認めた。
だがジャーナリストの同行は認められなかった。激戦地、アル・シジャーイヤで何が起きているのか? もしイスラエル軍が遺体を始末すれば、大虐殺が起きていても闇に葬られるだけだ。
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