田中教授は日本原子力学会会長、原子力産業協会理事などを歴任。ザ・御用学者ともいえる田中教授は東電記念財団や原発メーカーなどから760万円の報酬、寄付を受け取っていたことが明らかになっている。
世間の常識に照らし合わせた場合、自分に多額の寄付をしてくれる相手をまともに規制できる訳がない。
田中教授は辞令を交付された後、ぶら下がり記者会見に応じた。田中氏は「国会の決定を受けて」「(原子力規制委員会が)孤立しないように」を連発した。
国会は与党の自公と野党最大会派の民主党が原発推進派だ。「国会の決定を受け」れば、規制が推進派寄りになるのではないか?
筆者がこう質問すると、田中氏は「ない」と答えた。
「(原子力規制委員会が)孤立しないように」とは塩崎恭久・元官房長官が、再稼働に向けた審査を急ぐように規制委員会に圧力をかけに来た際の言葉である。この点についても筆者は質した。
田中氏の答えは「どこの国においても孤立しない独立性がポイントになっている」と禅問答のようであった。
マスコミ記者が「中立性をどのように保ってゆくか」と聞くと田中氏は次のように答えた―
「国会で議論されたことであって(…この後、聞き取れず、滑舌の悪さは安倍首相以上だ) 規制委員会というのは国民の安全を守るという大きな目的がある。大きな観点から検討するという大きな目的がある。大きな目的を感じながらやってゆきたい」。
こうなると全く意味不明だ。答えになっていない。
原子力産業や電気事業者から受けた多額の寄付についても記者団から質問が出た。田中氏の答えは要領を得ないものだった―
「適格性については私の方からコメントする立場にない。国会の議論のなかで(この後、聞き取れず)…国会の決定を受けて、それを受け止めてやってゆきたい」。
業を煮やしたフリー記者の上出義樹氏が「(田中氏は)原子力村から寄付を受けていた。一般から見るとどうしても再稼働を後押しするために選ばれたと思われるが…?」と突っ込んだ。
田中氏の答えは―
「規制委員会は人を守るという大きな目的がある。そういう観点から国会が私を送り出したと思っているから、ここの所を深く受け止めてやってゆきたい」。
田中氏は何一つまともに答えなかった。わざとなのか。それともこういう思考回路なのか。ひまがあったらICレコーダーを聞き直して「国会」という言葉が幾度出てきたのか、数えてみたい。
禅問答で はぐらかし続けた田中氏が返答に窮したことがあった。記者団から「これまでは(原発を)推進する立場だった。これからは規制当局(の一員)となる。ご自身としてどういうスタンスをとるのか?」と問われた時だ。
田中氏は「ちょっとまあ~これから考えたいと思う」。
地震学者で再稼働に厳しい姿勢で臨んだ島崎邦彦委員は、表向き任期切れで原子力規制委員の職を解かれる。原子力業界や電事連と近い自民党議員が公然と島崎委員の退任を求めていた。
こうした中、原子力村と浅からぬ関係にあった田中教授が原子力規制委員に就任する。世論の強い反対があろうとも原発再稼働に突き進む安倍政権が押し込んだ人物だけのことはある。