大阪のコリアタウン鶴橋できょう、民族差別と民族宥和が交錯した。レイシストたちが「在日韓国・朝鮮人排斥」を叫んでデモ行進し、「友だち守る団」が「ACAN(アカン=排外主義と戦うネットワーク)関西」や市民に呼びかけて「民族差別反対の声」をあげた。
大阪府には12万4千人の在日韓国・朝鮮人が住み東京と1、2位を争う。鶴橋は大阪の在日韓国朝鮮人が集中する、いわばメッカである。
キムチやチヂミを売る間口1~2間ほどの狭い店がJR高架沿いにひしめき、軒を連ねる焼き肉店の甘辛い匂いが立ちこめる。ソウルの南大門市場に迷い込んだかのような錯覚を覚えるのが鶴橋だ。
日の丸や旭日旗を林立させたレイシストたちは、ここを練り歩きながら韓国・朝鮮人たちへのヘイトスピーチを続けた。筆者はデモ隊と警察の両方に厳しくマークされながら同道した。
トラメガを持った男が「殺せ殺せ」とリードすると、皆が「朝鮮人朝鮮人」と合唱する。先導する車のスピーカーが「チョンコを叩き出せ」を連呼した。
「何で我々が働いて納めた税金でチョンコたちを養わなければならないのか?」、レイシストたちは得意げにがなり立てる。在日コリアンたちが最も許せないのは、このフレーズではないだろうか。
「ひどいね。私たち税金払ってるわよ」。JR高架下で眉をひそめながらデモ隊を見つめていた在日コリアンの女性はポツリと言った。
民族宥和を唱える市民たちは、「友だちを守れ」「民族差別反対」のプラカードを掲げてデモ隊に抗議した。
ACANで活動を続けて5年になる男性(60代)の言葉が事態を的確に表していた。「便所の落書きのような言葉を白昼堂々とスピーカーでわめき散らす。やられる方はたまったものではない。それを許す警察もどうかしている」。
100%単一民族国家なんぞこの地球上で探すのは困難だ。いわれなき民族差別を受ける側の怒りと悲しみは計り知れない。「我が民族だけが…」の独善は、旧ユーゴスラビアで起きたエスニック・クレンジングの悲劇を生んだ。