福島第2原発の再稼働を目論む東京電力はきょう、4号機の原子炉建屋に報道陣を入れ、燃料棒の取換え作業を公開した。廃炉を求める地元の声が根強いなか、圧力容器や核燃料貯蔵プールなどが損傷していないことを見せることで、復旧ぶりをアピールする狙いがあるものと見られる。
東電福島第2原発は昨年3月11日の東日本大震災で津波に襲われ、電源を失い冷却機能を喪失した。その後1年半かけてポンプや電源ケーブルを交換するなどして復旧作業を進めてきた。
最も早く復旧したのが4号機で、先月11日に格納容器、14日に圧力容器のフタを開けるところまで漕ぎ着けた。先月21日から圧力容器と使用済み核燃料プールの間に10日間かけて水を張り、今月1日から使用済み核燃料を原子炉(圧力容器)から抜き取る作業を始めた。
クレーンの先を原子炉(圧力容器)の中に突っ込み1本ずつ引き抜き、そのまま使用済み核燃料プールに移してゆく。1本につき約10分間を要する。こうして24日間かけ原子炉(圧力容器)の中にある724本すべてを抜き取る。
核燃料は水から取り出さずにそのままプールに移されるので、ただちに健康に害を及ぼすほどの放射能を大気中に放出することはない。筆者はじめメディアはこの過程を原子炉の間近で撮影することができた。
増田尚宏所長は「燃料棒は真っ直ぐじゃないと刺さらない。原子炉4基すべて痛んでいないと思っている」と自信をのぞかせた。
防護服に着替えての取材となった。報道陣は3班に分けられた。フリーランスなどインディペンデント・メディアは第3班として括られた。第3勢力という意味だろうか。数少ないが6人いる。
「これで自分だけ核燃料貯蔵プールに叩き落とされることはない。万が一そうなってもIWJが記録してくれるはずだ」。筆者はとりあえず胸をなで下ろした。
だが東電にしてみれば、インディーは目障りな存在だ。記者クラブと電事連の癒着を指摘し、再稼働にも反対するからだ。第3班の6人全員が消えたりするのではないかと内心恐れた。
筆者は発電所内で行われた記者会見で「再稼働を申請するとすれば、どの号機の復旧、点検を済ませた段階になるか?」と質問した。増田所長は「申し上げる段階ではない」とかわした。
福島第2原発が立地する楢葉町は、第1原発の爆発事故の影響でいまだに立ち入りが制限(※)されており、「死の街」状態だ。放射能汚染を恐れる町民は帰りたがらない。
それでも政府は制限を解いて「東電・福島第2原発」を再稼働に持ってゆくのだろうか。
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8月10日午前零時を持って「立ち入り禁止区域」から「避難指示解除準備区域」となったが、町民は自宅に宿泊できない。