全国が今回の都知事選挙に注目している。沖縄をのぞく全土に原発が50基あまりもひしめく日本。原発を止める人物が新知事となるのか。それとも再稼働容認派が新知事となるのか。都民だけでなく、各地の人々にとっても他人事ではなくなっている。
一昨日、有楽町では福島県南相馬市の桜井勝延市長らが細川護熙候補の応援に駆けつけた。きょうは福島から静岡に家族と共に避難している長谷川克己さんが宇都宮けんじ候補の応援演説をした。長谷川さんは候補とともに町田市や八王子市など都西部を回りながら懸命に訴えた―
「福島の原発事故で子ども達を被曝させてしまいました。政治は福島を切り捨てるのか?医療は福島を助けないのか?(こうした中)宇都宮さんを中心とした法律家の方々が手を差し伸べてくれた。福島の親たちは宇都宮さんに恩義がある。脱原発、脱被曝の問題で心から寄り添って闘ってきたのは宇都宮さんただ一人です」
「『沢山の電力を使っている東京は、福島県民をこんな目に遭わせて本当に申し訳ない』と謝られたことが何度もあったが、そんなことはない、無関心だった私達も同じ」
「脱原発が今回の選挙の大きな争点であるならば、東京都民はこのことに無関心であってはならない。東京都民は福島の、そして日本の親の先頭に立って脱原発の旗を掲げるべきだと思う」
冷たい雨が長谷川さんのコートを濡らした。3年前の原発事故直後、福島に降り注いだ雨を長谷川さんは思い出したのではないだろうか。
《最後は世論による候補者統一》
選挙情勢は最終盤となった今も原発再稼働容認派の舛添要一候補がリードを保つ。選挙報道では定評のある某社の世論調査の数字を見た。宇都宮候補と細川候補の票を足した場合、ほんのわずか舛添候補に及ばない。
だが1%上がれば僅差で逆転できる。5%上がれば、2候補の票がすんなり重ならなくても舛添候補を破ることができる。
宇都宮陣営と細川陣営が共闘しないことに苛立ち焦る有権者は少なくない。2候補の話をよく聞いていると「政策」は同じなのである。
宇都宮氏は「福祉・雇用政策の充実」を具体的に掲げる。細川氏は「大量生産・大量消費の傲慢な資本主義を見直し文明の転換を図る」と語る。人と暮らしを大切にする社会を説いているのである。哲学において宇都宮氏と変わりないのだ。
にもかかわらず、ことさらに両候補の違いを強調する向きがある。相手陣営への罵詈雑言さえ飛び交う。ネット上でこれらが繰り広げられれば、たいがいの無党派層は嫌気がさす。無党派層が選挙に行かなければ投票率は下がる。脱原発陣営にとっての自殺行為を行ってどうするのか。
有志による懸命の説得工作が続いているが、「どちらかが降りる」確率はゼロに近い。「脱原発都知事」を誕生させるには、世論で候補者を統一するしかない。