吉祥寺駅北口午後3時。サンロード入口広場に入りきれない聴衆は駅通路にまで溢れた。小泉元首相が全面的にバックアップする細川陣営に、きょうはさらに心強い助っ人が加わったからだ。作家の瀬戸内寂聴氏(91歳)だ。
「京都から駆けつけましたけど、別に細川さんとあやしい関係じゃありません」。寂聴氏は会場に到着するなりお色気を交えた話術で聴衆を沸かせた。
細川候補は寂聴氏とのエピソードを明かした―
「私が壇蜜さんと対談すると言ったら寂聴さんから“ 艶っぽい話は私の方が吉行淳之介さん※から御墨つきを頂いているのよ ”と言われた」
細川候補は「寂聴さんは不条理に向かい闘う気概を持っている。青年のように若い」と称えた。
陽が傾き始めると演説会場には、JR吉祥寺駅ビルの影ができた。北風が刺すように冷たい。細川候補と小泉元首相の演説は2人合わせて小一時間に及んだ。寂聴氏はショールを両肩に巻いて寒さをしのぎ出番を待った。
細川、小泉両氏は選挙カーの上に乗っての演説だが、寂聴氏は足が弱っているため地上の椅子に腰を降ろした。そしてマイクが小泉元首相から寂聴氏に渡された。
「いい年をしてそんなことするなって言われたんですが、止むに止まれずやってきました。勝つかどうか分からないです、でも2人の話を聞いて本当に安心しました」
「何を感動したかと言うと、お二人には本当に情熱がある。今の若い人より情熱がある。生きて行く上で死ぬまで人間は情熱を失ってはだめなんです」
「穏やかな生活を捨てて止むに止まれぬ気持ちになって立ち上がったということは素晴らしいこと……(中略) 引っ込めなんて間違っている。私達に任せてください」。
「寂聴節」全開だ。とても91歳とは思えない。
瀬戸内寂聴氏は原発事故翌年の2012年5月、経産省前の「脱原発テント」を訪問している。「90年生きてきて、今の日本が一番ひどい」と言い「余生は原発反対にかける」と宣言していた。
あの時は一年のうちで最も気候の良い5月だった。ところが今回はお年寄りの体に最もこたえる真冬だ。脱原発にかける執念が91歳の彼女を突き動かしたのだろう。寂聴氏は明日も細川候補の応援演説に立つ予定だ。
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※吉行淳之介
昭和の小説家。1954年「驟雨」で第31回芥川賞受賞。男女関係の あや を巧みに描き人気を博した。