金曜夕方の首相官邸周辺(通称:金官)はやはり脱原発の聖地だった。きょうは東京都知事選挙で「脱原発票」を二分している細川護煕候補と宇都宮けんじ候補が揃って国会議事堂前ステージに登場した。
2人に先立って福島みずほ議員(社民)、吉良よし子、笠井あきら両議員(共産)、阿部知子議員(みどりの風)がスピーチした。原発を止めるためなら党派を問わず、一緒にやる。それがここの流儀だ。
宇都宮候補は「脱原発は脱被ばくと共に進める」などとスピーチした。細川氏との違いを強調する狙いがあったのだろうか。
小泉純一郎元首相と共に現れた細川候補は、公選法を気にしてお立ち台に上らずマイクも使わなかった。肉声で「再稼働させず原発をゼロにする」と語った。
投票日が9日後に迫るなか、マスコミの世論調査はいずれも再稼働容認のマスゾエ候補が大きくリードしている。
脱原発陣営は分裂選挙がたたり苦戦を強いられている。支持が割れれば力は半減する。いや実際はもっと減る。しがらみで動けなくなるからだ。
会場で宇都宮候補と細川候補の揃う姿を見たある女性(60代後半・年金生活者)は、2012年末の都知事選挙で宇都宮陣営を手伝った。しかし今回はどっちつかずだ。
「票を割るようなことはしたくないから」。彼女は苦しい胸のうちを明かした。「なんで一本化できないのか? 前回の衆院選と参院選で負けたのに何で野党はまとまらないのか? 本当に原発を止めたいのであれば小異を捨てて大同につくべき」。彼女は吐き出すように一気に話した。
動けないのは彼女ばかりでない。選挙ともなれば勝手連として「脱原発候補」の運動をしていた人たちも同様だ。
今、どちらかの陣営で動いている人も、かつての仲間が相手陣営にいたりする。バッシングを浴びることもあり、思う存分動けない。
選挙は選対だけでできるものではない。手足となる勝手連やボランティアは欠くことができない。
このまま投票日を迎えるようなことになれば、喜ぶのは原子力村であり、安倍政権である。強敵を破るには「国共合作」「薩長同盟」しかないのである。