“密使”と言われながら、なぜか北京空港で民放カメラに捉えられた細野豪志・衆院議員の訪中。菅首相は「まったく承知していない」(29日)と否定し、前原外相は「あれは政府と全く関係ないですから」(同日)と突き放す。
尖閣諸島沖で海上巡視船に中国漁船が衝突した事件をめぐって膠着した日中関係に打開の糸口は見えない。軍事区域に無断で立ち入ったとして中国治安当局によって拘束された準大手ゼネコン「フジタ」の日本人社員4人は、細野氏が訪中した29日の時点ではまだ身柄を押さえられたままだった。
このためさまざまな憶測が飛んだ。「4人の解放を中国政府に求める菅首相の親書を携えている」とする報道が主流であった。細野氏が小沢前幹事長に近いことから「小沢氏が背後で動いた」とする説も根強かった。
だが、小沢氏に近いある衆院議員は筆者の電話取材に「小沢じゃないみたいだ」。それでは、「首相の密使」なのだろうか。それを解明するうえで大きなヒントとなったのは、30日の岡田克也幹事長の記者会見だ。
岡田幹事長は、「(細野氏の訪中を)事前に知っていたが党としては全く関与していない」と繰り返し否定した。そのうえで細野氏に同行している民主党の職員については「今は官邸のスタッフ」だとした。
「官邸の密使」であることを岡田幹事長が示唆したのである。菅首相は「承知している」と答えると密使にならないため否定したのだ。仙谷官房長官も30日になって「(細野氏の訪中を)事前に知っていた」と密使であったことを暗に認めた。細野氏個人の資格でできる案件ではない。
細野氏の訪中をめぐっては話が一ひねりある。「北朝鮮当局者とも会っていたようだ」、というのだ。前出の小沢氏に近い議員が明かした。小沢氏は拉致問題をめぐって北朝鮮との交渉を中国で密かに続けており、細野氏が中国政府を仲立にして北朝鮮と交渉を持ったとしても不自然ではない。
細野氏訪中の結果として拘束されていた「フジタ」の日本人4人のうち3人は解放された。そのうえ拉致問題の解決に向けて北朝鮮とも交渉とくれば、なかなかやるじゃないか、と感心していた。
ところが拉致問題のエキスパートは一笑に付す。中山恭子・元拉致問題担当相は「官邸のスタッフが同行しているということはカネ。北朝鮮がその官邸スタッフをよほど信用していない限り、力のない人物が出て来て金をふんだくるだけになる」。
細野氏が中国で北朝鮮と交渉を持ちカネを巻き上げられたと確定したわけではないが、「仙谷官邸」の外交には不安がつきまとう。
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