日曜日ともなると毎週のように新大久保で吹き荒れる在特会(在日特権を許さない市民の会)などのヘイトデモ。民族差別に抗議する市民らがきょう、東京都公安委員会を訪れ、31日に予定されている在特会による新大久保(※注)でのデモ・街宣を容認しないよう要請した。
要請に同行した有田芳生参院議員によると、公安委員会は29日(金)にも会議を開きコース変更を指示するのかなどを決める、という。
新大久保のヘイトスピーチが可愛く思えるほど、酷く汚い言葉が飛び交うのが大阪鶴橋だ。新大久保と同じく31日にレイシストたちが民族排撃集会を行う予定だ。ところが鶴橋でカウンターに立つ「友だち守る団」の凛七星代表は、大阪府警に規制要請を提出しなかった。
大阪府警に対する不信感が背景にあるようだ。凛代表は理由を次のように説明した―
ある市民団体が「日本・コリア友情のキャンペーン」と題する街宣活動を31日にJR鶴橋駅の高架真下で行う届出を大阪府警に出していた。ところが同日、同時刻にレイシストたちが隣接したスペース(高架斜め下)で民族排撃集会を開く。
大阪府警は、この市民団体より遅れてレイシストが提出した集会の届け出を受理したのである。
(管轄が高架をはさんで天王寺警察署と東成警察署に分かれているため、市民団体の届出を天王寺署が、レイシストの届出を東成署が受理した。)
「これでは“ぶつかれ”というようなものだ。大阪府警は私たちをも逮捕したいのか? それならそれで腹をくくる」。凛さんは厳しい表情で語った。
筆者は先月24日、鶴橋で行われたヘイトデモを取材したが、大阪府警の対応は酷い。レイシストではなくてカウンターや取材陣を厳しく規制してくるのである。カウンターは狭い一角に押し込められ、記者は歩道にいただけでも「立ち退き」を迫られる。田中龍作も31日は腹をくくって大阪に行く予定だ。
東京都公安委員会への要請に同行した神原元(はじめ)弁護士は次のように話す―
「“朝鮮人をたたき出せ”“ゴキブリ”などの言葉が表現の自由として守られるべきものなのか? これが認められれば学校のイジメも認められることになる。ヘイトスピーチに対する法規制は(日本には)ないが、現行法の枠組みで何ができるのか、その第一歩にしたい」。
聞くに耐えないヘイトスピーチといえども警察の介入は「表現の自由」とも密接に絡んでくる。確かに悩ましい問題である。
法で規制するようなことになれば、在特会やネトウヨをはじめとするレイシストたちへの取締りをテコに、在野の人々の言論活動を封じ込めることも可能だ。
新大久保や鶴橋で起きていることは、レイシズムに限った問題ではない。あらゆる分野の言論統制に利用される危険性があることを認識しなければならない。
◇
(※注)
「大久保通りの北新宿1丁目から2丁目の区間」及び「職安通りの北新宿百人町から東新宿までの区間」