マスコミが熱狂した「政権交代」から1年が経つ――。昨年8月30日深夜、東京・六本木に設けられた民主党の開票センターからタクシーで帰路に着いた。筆者がシャーナリストと分かるやタクシー運転手が尋ねてきた。「民主党に代って日本は良くなるんですか?」…今、この言葉が耳鳴りのように甦る。30代の若い運転手は勤めていた会社が倒産しドライバーに成ったばかり、といった。
劣化し二進(にっち)も三進(さっち)も行かなくなった自民党政治に幕が降り、新しい政治が始まるものと多くの国民は歓迎した。ところが、期待は失望に代わり、そして今底知れぬ不安が日本中を覆う。前出のタクシー運転手の疑問は、不幸にも悪い答えが出たことになる。
知己の間柄である市民運動出身の民主党衆院議員は、世の中が政権交代前よりも悪くなっていることを認める。彼女は「市民目線って言うけど、政治家が考えている市民目線はちょっとズレているのよね」と自嘲気味に語った。
骨をきしませるようにして働いても年収200万円以下のワーキングプアが1,000万人をゆうに超え、自殺者は年に3万人を上回る。
「国民の生活が第一」と謳いながらズレた市民目線しか持たぬ民主党政権はこの一年間、手をこまねき続けた。鳩山内閣は迷走し、菅内閣は無為無策を極めた。行き着いた先は政権与党を二分しかねない政争だ。
民主党代表選挙で菅首相が再選されても、いずれ政権運営は行き詰る。「小沢首相」になれば「政治とカネ」をめぐる「みそぎ解散」の可能性が高い。
政治空白が続くことに元政府関係者は「官僚は寝てるよ」と指摘する。霞ヶ関を掌握できる政権が登場するまでに日本が沈みきってしまわなければ良いのだが。
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